2021 Fiscal Year Research-status Report
小児最未分化型急性骨髄性白血病の病態解析および特異的治療の基盤開発
Project/Area Number |
20K16923
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
才田 聡 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (70638254)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 小児がん / 白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
最未分化型急性骨髄性白血病(AML-M0)は、小児の急性骨髄性白血病(AML)の中でも予後不良であることが報告されており、治療成績向上のための適切な治療法の開発が求められている。本研究では、小児AML-M0の患者検体を用いた種々のオミックス解析を行うことで、その遺伝学・生物学的プロファイルを明らかにし、小児AML-M0の原因となる遺伝学的異常、予後予測因子および新規治療標的の同定を目指す。 我々はデポジットデータ、自施設、協力施設、日本小児がん研究グループより得られたAML-M0の小児臨床検体47例と、成人検体34例について、その遺伝学的特徴についての比較を行った。 全エクソン解析を用いた遺伝子変異解析では、小児AML-M0と成人AML-M0の比較において、小児例ではFLT3, PTPN11およびJAK3の変異がより多かった。成人においては、RUNX1、IDH1、ASXL1変異を多く認めた。遺伝子発現解析では、小児では44%、成人で14%に白血病のドライバー変異と考えられる融合遺伝子を指摘し、その頻度について差があった。AML-M0とそれ以外のAMLとの遺伝子発現の比較からは、「造血幹細胞」に深く関与する遺伝子群の発現が、M0において高いことが示され、免疫学的な白血病細胞の特徴を反映する結果であった。 また遺伝子発現に関わるとされるマイクロRNA(miR)シーケンスの網羅的な解析では、好中球分化に関わるいくつかのマイクロRNAの発現が、AML-M0において低下していることが示された。 急性骨髄性白血病の中でも、AML-M0は未分化かつ造血幹細胞により近い性質を有していることが遺伝子発現プロファイルから示された。また発症年齢によって、遺伝学的な変異のプロファイルが異なることも明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小児最未分化型急性骨髄性白血病(AML-M0)は、小児急性白血病の中でも極めて稀であるが、その予後は不良で、本疾患の病態を明らかにすることは、この予後不良の一群の治療成績を向上させる点において非常に重要である。 これまでに行われた研究から、これまで明らかにされている成人のAML-M0における遺伝子変異のパターンと、小児AML-M0の遺伝子変異のパターンに違いがあることが明らかとなった。 またマイクロRNAシーケンスや、メチル化アレイ解析も進行中であり、現在これらの結果を踏まえた統合解析を行っているところである。マイクロRNA(miR)シーケンスでは、白血病の起源となる細胞の性質を反映していると考えられるいくつかのmiRが同定されている。 以上のように、当初予定した解析は順調に進行しており、これまで明らかにされていなかった新規の知見も得られつつあるため、進捗はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点で、これまで推測はされてきたが、詳細に解析なされていなかったAML-M0の遺伝学的な特徴や、その遺伝子発現パターンの全容が明らかにされつつある。
これらに加え、今後は個々の症例における腫瘍細胞の多様性を明らかにするためのシングルセルシーケンスを行う。 またメチル化解析を行い、エピゲノム変化が遺伝子発現にどれほどの影響の与えているかについても検討を行う。 これらの解析を追加し網羅的な解析を行うことで、これまで明らかにされていなかった新規の白血病発症機序の解明につなげていきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で出張費を使用しなかった。 また他の獲得助成金でまかなえるものがあった。 残額は、来年度の消耗品等の購入にあてます。
|