2021 Fiscal Year Research-status Report
脳室内出血予防のための、NIRS-内大脳静脈の揺らぎ関連の解明
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20K16930
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
房川 眞太郎 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20866131)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | NIRS / 内大脳静脈 / 脳室内出血 / INVOS / 超低出生体重児 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳室内出血(Intraventricular hemorrhage:IVH)は新生児の予後に影響を与える重大な合併症の一つであり、重症IVHと神経学的予後との相関は高い。IVHの発症後は循環動態の安定、止血凝固機能の強化、貧血の是正、けいれんの予防などといった対症療法が基本となるため、出血の予防が重要とされている。しかし予 防のための循環管理として有用な非侵襲的かつ持続的なモニタリング手法が確立していないことが課題となっている。近年、内大脳静脈の血流波形の評価や、近赤外分光法(Near infrared spectroscopy:NIRS)による脳の局所酸素飽和度(regional cerebral oxygen saturation:rScO2)モニタリングの有用性が見いだされつつあるが、未だ研究途上である上にこれら同士の関連について調べられた報告はない。本研究ではこれらの関連について調べることを目的とした。体重1000g未満、在胎24週以上30週未満で出生した児を対象とし、染色体異常、致死的な奇形症候群、先天性心疾患、出生時の状態が悪く早期死亡が見込まれる児については除外する。内大脳静脈の揺らぎ波形の程度と、rScO2との相関を求め、IVH未発症群、軽症IVH群(Papille分類grade 1と2)、重症IVH群(Papille分類grade 3と4)での差について比較検討する。まずは2年間で30症例の収集を目標とする。現在までに本研究費によって研究環境を整備し、データを収集中である。 上記のように補助金は補助条件に従って有効に使用されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの2年間で10例ほどのデータを収集できたが当初目標の30症例には到達していない。COVID19母体からの出生児に対して医療的資源を注ぐ必要があるため、超低出生体重児を含めたその他の病児の受け入れが困難ば場合があったことや、本研究では在胎24週以上30週未満で出生した超低出生体重児を対象としており、本年度では24週未満の未熟性の強い児が複数出生しており、INVOSモニター貼付による皮膚障害を懸念し対象としなかったこと、などが理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では超低出生体重児の内大脳静脈の揺らぎ波形の程度と、rScO2との相関を求める。また、IVH未発症群、軽症IVH群(Papille分類grade 1と2)、重症IVH群(Papille分類grade 3と4)での差について比較検討する。rScO2の測定には未熟な皮膚への傷害を配慮し、粘着テープ部は医療用テープ剥離剤等を用いて無効化し、用手的に圧着させて測定する。rScO2が安定してから60秒以上観察を継続し、平均的な値を記録する。内大脳静脈揺らぎ波形測定は池田らの報告を参照にし、大泉門よりアプローチし、矢状断像で左右いずれかの内 大脳静脈を描出し、パルスドプラ法にて揺らぎ波形を測定し、grade 0~3に分類する。また同時にIVHの有無を確認し、出血していた場合は重症度についてPapilleらの分類で記録する。NICU入室後できるかぎり早期に初回の検査・測定を行い、以降は8時間毎を目安に検査・測定を繰り返し、生後120時間を越えたところで終了とする。各時刻における、内大脳静脈の揺らぎ波形のgradeとrScO2との関連について、統計学的処理を行い相関を求める。さらに非IVH群、軽症IVH群、重症IVH群での群間比較を行う。本研究は探索的な観察研究であり、まずは2年間で30症例の収集を目標とする。症例数が足りない場合は適宜研究期間を延長する。 上記の当初方針に則り引き続き症例数を集めていく。十分な症例数に達すれば、得られたデータを解析し、内大脳静脈の揺らぎとrScO2との関連について探求していく。意義のある結果が見いだせれば、IVH発症の病態への理解がすすみ、これらを組み合わせた新たなIVH予防管理法の提唱が可能となるかもしれない。
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Causes of Carryover |
当初は新生児用ソマセンサーを研究用として購入するための費用を充てていたが、病院として医療用に購入されることとなったため、費用負担が生じなくなった。またCOVID19流行に伴い出張発表の場がなくなったため、旅費や学会参加費がなくなった。これらの分は次年度以降の研究環境の整備費や、論文作成や英語翻訳のための費用、研究成果報告のための旅費・参加費として使用する事を計画している。
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