2022 Fiscal Year Research-status Report
胎児十二指腸・空腸閉鎖症の疾患レジストリによる臍帯潰瘍の病態解明と発症予測の研究
Project/Area Number |
20K16944
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
小澤 克典 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 周産期・母性診療センター, 医員 (70408516)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 臍帯潰瘍 / 先天性十二指腸閉鎖症 / 先天性空腸閉鎖症 / 羊水中総胆汁酸濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性十二指腸閉鎖症や空腸閉鎖症をもって生まれてくる児は5000人に1人だが、約10%に周産期死亡を起こす。近年、この主な死亡原因に臍帯潰瘍が関係していることが分かってきた。臍帯潰瘍とは臍帯のワルトンゼリーが菲薄化して臍帯血管が露見した状態を指し、子宮内で動脈性の出血や血流障害を起こすことで胎児死亡や新生児死亡の原因となる。これまでの臍帯潰瘍の報告をまとめると生存率は33%であったが、いずれも症例集積研究や後方視的研究であり、臍帯潰瘍の病 態や予後については不明な点が多い。我々の後方視的研究では、臍帯潰瘍の重症度を病理所見から5つのグレードに分類し、胎児死亡した4例のうち3例は最も臍帯潰瘍グレードが高かった。また、臍帯潰瘍のあった児は、臍帯潰瘍のなかった児と比較して羊水中の総胆汁酸濃度が高値であった。 本研究は胎児十二指腸閉鎖症・空腸閉鎖症の疾患レジストリを構築し、臍帯潰瘍の発生頻度や死亡率等の疫学的情報を得ることを目的とした。また、臍帯潰瘍と関連する因子を探索し、臍帯潰瘍の発症予測モデルを作成する。臨床で羊水を採取する際に試料として羊水を保管し、総胆汁酸濃度を含む羊水中の生化学検査を実施する。また、臍帯潰瘍のグレード分類をする病理検査は、臍帯潰瘍の診断経験のある2名の病理医から構成される中央診断とした。 全国から22施設が研究に参加し、2023年3月末までに82例の症例登録があった。病理診断は69例で完了し、臍帯潰瘍Grade 0:1例、Grade 1:27例、Grade 2:25例、Grade 3:8例、Grade 4:8例であり、胎児死亡は2例、新生児死亡は4例あった。分娩週数の中央値は36週(32-39週)で、羊水中総胆汁酸濃度の中央値は10.8μmol/L(Q1 2.3, Q3 22.9μmol/L)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
疾患レジストリの登録システム(症例報告書・データベースなど)の準備に半年を費やし、2020年11月にキックオフ・ミーティングを実施、2020年12月から症例登録を開始した。1年間で50例の登録を予測していたが、コロナ禍の影響もあり症例登録のペースが鈍化した。しかし、研究開始から2年4か月で82例の登録が完了しているため、研究計画の見直しによって研究登録期間を2023年3月までに延長したが、その計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、研究登録期間は2023年3月までの計画であったが、登録症例数の推移から登録期間を1年間延長した。現在の登録ペースだと、新たな計画の通り2024年3月には症例登録数が100例を超える予定である。研究の中心となっている病理診断は問題なく進んでおり、羊水検体を採取・保管できた症例数も全体の7~8割となっており、計画の範囲となっている。データは臨床研究センターのデータセンターでREDCapシステムを使用して管理できている。2024年3月末で登録を終了し、2024年4月~8月でデータ解析、2024年9月~12月に論文作成・投稿をする予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は臍帯や羊水検体、病理標本の輸送費(冷凍搬送のときのドライアイス購入を含む)、および羊水生化学検査費用が主な使用理由となっている。搬送に使用する容器や羊水を冷凍保管する際に使用する容器の購入にも利用した。他には、研究に関連する最新情報の入手や議論を目的とした各種学会費にも使用している。登録ペースが当初の計画より遅れており、登録期間を1年延長したため、上記の輸送費や検査代のために次年度に繰り越さなければならなくなった。
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