2021 Fiscal Year Research-status Report
ロングリードシークエンサーによる染色体構造異常症の切断点解析
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20K16945
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Research Institution | Kanagawa Children's Medical Center (Clinical Research Institute) |
Principal Investigator |
村上 博昭 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医師 (30836440)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ロングリードシークエンサー / 染色体構造異常 / 切断点解析 / 先天異常症 / TAD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新生突然変異としての均衡型染色体異常を有することが明らかであるにも関わらず、その遺伝学的原因が既存の手法では解明出来ない症例について、ロングリードシークエンサーにより切断点を解析し解明することである。本年度においては、1例についてロングリードシークエンサー解析を終了し、さらに追加の1例の解析を進めている。解析が終了した症例について以下に成果を述べる。 症例は2歳男児で、脳形態異常、発達遅滞を示し、染色体検査で3番染色体長腕に両親に認めない新生突然変異としての逆位を有していた。ただし、Whole exome sequencingや染色体マイクロアレイ検査では当該部位を含め明らかな原因が不明であり、ロングリードシークエンサーによる解析を施行した。結果、逆位の切断点の塩基レベルでの詳細が明らかとなり、脳形態に重要であると考えられる転写因子のプロモーター領域を切断していることが明らかとなった。過去に同遺伝子の機能低下により、本児と非常に似た症状を示した症例が数例報告されていた。多職種でのカンファレンスを開催し、本症例の臨床像と整合性が高いと評価した。プロモーター領域の構造異常による本疾患の症例は過去に報告はなかった。おそらく、染色体の機能ドメインであるTAD (topoologically associated domain)を破壊していると予測された。現在、患者と両親の末梢血リンパ球を用いて、当該遺伝子の転写量の違いを評価している。本症例の遺伝学的診断は、ロングリードシークエンサーによる解析を用いなければ非常に困難であったと予想され、本研究の意義を示す結果と考えられる。 また、現在、多発奇形、発達遅滞を認め、3本の染色体を含んだ複雑な転座を示す症例についてロングリードシークエンサーによる解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス流行に伴う臨床業務の想定以上の負担増加と、検体搬送や外部発注検査の遅滞が遅れの大きな原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
ロングリードシークエンサー解析が終了した検体については、RNAシークエンスなどを用いた検証を継続し、必要があれば患者と両親の血液からリンパ芽球を作成し、継続して解析できるように準備する。検証が終了した症例については、研究成果を学会や論文での発表により広く社会へ還元できるように努力する。
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Causes of Carryover |
前述の通り、研究計画がコロナウイルス流行などの要因で遅滞し研究期間の延長が必要となり、その分研究費用の支出時期が遅くなったため。現在、既に継続している研究について、追加支出を行い、有効に研究費として使用出来ている。
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