2021 Fiscal Year Research-status Report
胃底腺型胃癌を含む胃癌の発症機序の解明:ゲノムと遺伝子発現
Project/Area Number |
20K16952
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂口 賀基 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20791445)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胃底腺型胃癌 / NKX2-1/TTF-1 / SFTPB |
Outline of Annual Research Achievements |
胃底腺型胃癌に対して世界で初めて網羅的遺伝子発現解析を施行し、胃底腺型胃癌に特異的な遺伝子発現プロファイルを明らかにした。胃底腺型胃癌と正常胃粘膜の遺伝子発現プロファイル比較で、胃底腺型胃癌に特異的に発現上昇しているプローブの中にNKX2-1/TTF-1が含まれていた。NKX2-1/TTF-1は今まで肺・甲状腺の分化を特異的に担う転写因子と報告されており、肺癌における予後規定因子であると報告されている。一方で、他臓器の正常組織での発現や、他臓器癌の発生に関与しているという既報なない。本研究でNKX2-1/TTF-1が肺癌以外の癌組織において高発現することを初めて示したことは意義が大きい。 また網羅的遺伝子発現解析を施行した胃底腺型胃癌とは独立した胃底腺型胃癌群に対する免疫組織学的検討によりNKX2-1/TTF-1および下流のSFTPB, SFTPC, SCGB3A2を評価し、NKX2-1/TTF-1およびSFTPBが胃底腺型胃癌で有意に高発現していることを改めて示した。 また胃癌細胞株であるAGS・NUGC4細胞株にNKX2-1/TTF-1をtransductionし、SFTPB, SFTPC, SCGB3A2のtransactivationを誘導し、NKX2-1/TTF-1が胃細胞においても肺同様の機能を呈することも示した。 これらの結果をもってNKX2-1/TTF-1および下流のSFTPBなどの遺伝子群が胃底腺型胃癌の発生において重大な役割を担うことを初めて示したことも重要な知見であり、今後の胃癌発生研究に大きく貢献すると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、当初の目的である「胃底腺型胃癌の発生機序の解明」に向けて大きく前進している。具体的には、世界に先駆けて特異的な遺伝子発現プロファイルを明らかにし、さらに胃底腺型胃癌におけるNKX2-1/TTF-1の重要性について初めて明らかにした。
ただCOVID蔓延に伴い研究はやや遅れており、学会発表や論文投稿に至っていない。現在発表に向けて準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは現在までに得られた結果を学会において発表し、さらに公開データベースに遺伝子発現プロファイルを公開するとともに論文投稿をする予定である。
また今後、多施設研究としてより多くの胃底腺型胃癌を集積し、免疫組織学手法などを用いて上記メカニズムの検証をする予定である。 将来的には、胃底腺型胃癌由来のオルガノイド・細胞株を開発し、発癌メカニズムについてより明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
理由:COVID蔓延に伴う研究実施遅延。 使用計画:投稿に関わる費用、並びにRevision時追加実験費用。 また、さらに多くの症例を継続して集積しており、予算が許す限り多くの症例を用いて今まで得られた結果の検証を継続する予定である。
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