2021 Fiscal Year Research-status Report
SIRT7の腸管組織における機能解析および炎症性腸疾患との関連の探索
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20K16961
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
古田 陽輝 熊本大学, 病院, 特任助教 (00869513)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Sirt7 / 腸炎 / 腸管線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では老化に関与する分子であるSIRT7が、腸管においてどのような機能を有しているかを解析している。これまでの予備実験ではデキストラン硫酸(DSS)誘導性腸炎においてSirt7KOマウスはWTと比較し、惹起される腸炎の程度が異なることが見出された。同分子がユビキタスに発現する一方で、細胞により機能が異なることがある。 初年度は上皮機能に着目して解析を行なっており、本年度はさらに腸管線維細胞における影響に関して検討をおこなった。 まず、腸管線維芽細胞においてSIrt7の発現が炎症下に変化するのかを検証した。ヒト大腸線維芽細胞株であるCCD-18Coを用いて様々な炎症性サイトカイン(TGF-β, TNF-α, IL-17)の存在下に培養したところ、Sirt7はTGF-βの存在下においてその発現量が増加しており、何らかの機能を有していることが示唆された。 続いて、Sirt7が腸管線維芽細胞においてcollagenの産生に影響しているかを検討した。WTマウスとSirt7 KOマウスより大腸の線維芽細胞を抽出、培養し、それにTGF-β刺激により線維化へ関与する分子(collagen 1A1, MMR2, TINP-1, collagen3)の発現をqPCR法にて検証した。結果、TGF-β 刺激によりcollagen1A1の発現はSirt7KOにおいて有意に増加していた。 これらのことからSIrt7は、腸管線維芽細胞において、炎症状態においてはその発現を負に制御していることが示唆され、炎症状態における過剰な繊維化を制御する機能を有している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度では腸管線維化へのSirt7の影響を明らかとするため細胞株を用いた実験を中心におこなった。その結果をvivoでも検証することを予定していたが、本年度中では慢性腸炎による腸管線維化モデルを構築するまでに至り、SIrt7 WTとKOマウスにより違いが生じるか、検討を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
Sirt7が腸管線維芽細胞においてcollagen産生に影響している可能性が示された。そのことをvivoで証明するため、WTとSirt7KOマウスにおいて慢性腸炎下において腸管線維化の程度に差異があるか検討を行なっていく。またSirt7が腸管線維芽細胞において、どのように関与しているか解析するためChip-seqを用いて分子メカニズムの解明をおこなっていく予定である。
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Causes of Carryover |
SIRT7の分子生物学的特徴の解析は、同分子がユビキタスに発現する一方で、細胞により機能が異なることがある。腸管においては、腸管上皮細胞、線維芽細胞、免疫細胞などさまざまな細胞が互いに影響しているためそれぞれの機能解析を行うことで組織全体への影響を評価できる。そのため解析が多岐に渡り、単年度での研究が終了せず次年度への使用額が生じた。
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