2020 Fiscal Year Research-status Report
フソバクテリウムが大腸発がんに及ぼす影響の検証 -オルガノイドを用いて-
Project/Area Number |
20K16963
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
松浦 哲也 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (10784845)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸癌 / オルガノイド / フソバクテリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
1-2mm角の内視鏡検体からヒト大腸癌のオルガノイドを安定的に樹立する方法を確立した。これまでは樹立中に細菌のコンタミを起こすことが多々あったが、抗生剤で細胞滅菌する手順を挟むことでコンタミ率が低下し、樹立率を向上させることに成功した。 このオルガノイドにフソバクテリウムを感染させる。オルガノイドに細菌を感染させる最適な方法について検討した報告はない。オルガノイド内に細菌をmicroinjectionするのか、継代時に細菌を混ぜるのか、それともオルガノイドが育ってきたところで培養液に細菌を混ぜるのか、ひとつひとつ方法を丁寧に検証した。再現性、簡便さ、細胞に与える影響を確認し、細胞の継代時に感染させる方法を、採用することにした。 そしてフソバクテリウムが感染したオルガノイドにどのような表現型が現れるか観察した。フソバクテリウムが感染したオルガノイドは細胞の増殖スピードが増加する。感染後、3時間後の細胞からRNAを回収しRT-PCRを行うと、細胞成長速度を示す遺伝子の発現が亢進していた。また感染したオルガノイドは極性を失いオルガノイドの形態が崩れることがあった。これはがんの転移の際におこる上皮間葉転移と同じような現象であり、実際、オルガノイドの蛍光免疫染色を行うとE-cadherinの発現減少を認めた。 現在、フソバクテリウムによるがん転移のメカニズムに注目し分子生物学的な解析を進めている。またvivoでの検証として、マウス脾臓へのinjecionによる肝転移モデルを作成し、実際に肝転移を促進させる要因になるのか検証中である。フソバクテリウム感染が大腸癌細胞に与える影響を網羅的に解析するため、感染前後でのRNAseqを行う準備をしているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オルガノイドの安定的な培養、細菌の安定的な増殖と正確な濃度調整など、研究の基礎となる細胞と細菌の取り扱いを習熟するのに時間を要した。特に嫌気性細菌の取り扱い、濃度調整などは、これまでの関わったことのない未知の分野であり、試行錯誤の繰り返しであった。その後はゆっくりとだが確実に研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
vitroでの解析結果をvivoで検証する必要がある。本年はvitroでの検証を完成させる予定である。今後、マウスを用いた研究を予定しているが、脾臓へのオルガノイドインジェクションは手技の獲得が必要である。マウス取り扱いに熟練した同僚の助けをかりながら、研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究費節約のため必要最低限の物品購入に努めている。今後は遺伝子解析やマウスでの実証実験を予定しており、より高額な研究費が必要となる。
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