2022 Fiscal Year Research-status Report
消化管蠕動運動における内因性ドパミンの新規制御機構の解明
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20K16964
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
中森 裕之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (60824349)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近位結腸 / 6-OHDA / ドパミン / パーキンソン病 / 蠕動運動 / 便秘 / ビデオイメージング法 / GBR12909 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近位結腸の壁内神経系に存在するドパミン神経の運動制御における役割を解明することである。摘出したラットの近位結腸を用いて実験を行った。 これまでにドパミン神経が抑制性の遠心性神経に投射していることが示唆されたため、ビデオイメージング法によりターゲットとなる神経を同定した。ドパミン神経が一酸化窒素作動性神経に投射しているが、血管作動性腸ペプチド(VIP)神経およびプリン作動性神経には投射していないことが示唆された。前年度にドパミン神経毒である6-hydroxydopamine(6-OHDA)を用いて、消化管のドパミン枯渇による影響を検討した。この6-OHDAはドパミン神経だけでなく、交感神経系も破壊するため、摘出結腸標本で観察される蠕動運動における交感神経の役割を確認した。ノルアドレナリンの受容体拮抗薬および再取込阻害薬は蠕動運動に影響を及ぼさなかったため、中枢神経系から切り離された本実験標本では交感神経系は働いていないことが示された。 これらと前年度までの結果をまとめた論文を投稿中である。 また研究過程で、腸内分泌細胞のL細胞から分泌されるglucagon-like peptide 1(GLP-1)が蠕動運動を促進させることを明らかにしたため、この研究についても進展させた。リポ多糖(LPS)はグラム陰性菌の壁に存在するO抗原であり、L細胞からのGLP-1放出を刺激する。このLPSが大腸蠕動運動を促進させること、LPSによる促進作用にGLP-1が関与していることを明らかにした。これらの結果を論文にし、投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はこれまでの内容を論文にまとめて、消化管生理学関連の雑誌に投稿している。査読者に指摘された内容も追加実験で解決している。しかしながら、コロナの影響で長期間および散発的に実験ができない日があり、慢性ストレスモデルラットを用いた実験は遂行不可能であった。また、論文雑誌の編集者、査読者からの返答が遅れており、本年度中に公表ができなかった。これらのことを踏まえて、「やや遅れている」と判断した。 本研究は本年度が最終年度であったが、査読者からの指摘で追加実験があるのか不明であること、公表する雑誌によっては投稿料が必要になることから、期間を延長させた。しかしながら、大々的な内容の変更はないと予想している。
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Strategy for Future Research Activity |
投稿した論文の返答待ちではあるが、指摘があった場合は追加実験をし、受理されるよう研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響で実験ができない期間があったことと、リバイス時の追加実験や論文投稿料にあてる予定だった予算が、返答が遅れていることで残す必要があることが理由である。次年度使用額は本研究の追加実験や論文の投稿料、実験系の維持費に使用する。
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