2021 Fiscal Year Research-status Report
新規エクソソーム内包タンパク質が司る肝発生と線維肝再生の分子機構
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20K16971
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
柳川 享世 東海大学, 医学部, 助教 (10760291)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肝発生 / 肝再生 / 線維肝 / 再生医療 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、所属研究室が独自に見出した新規の線維肝再生促進因子であるOpioid growth factor receptor- like 1 (OGFRL1)について、OGFRL1ノックアウトマウスの表現型解析、OGFRL1のシグナル伝達経路の解析、OGFRL1の作用機序の解明という3つの主要項目を解析することで、線維肝の再生と胎仔肝の発生に共通するOGFRL1の分子機構を明らかにすることを目的としている。2年めである令和3年度は、主に以下の3点について達成した。 1) CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて樹立した複数系統のOGFRL1ノックアウトマウスを用いて、肝傷害時と再生時の肝組織の変化などを調べた。このOGFRL1ノックアウトマウスは、Ogfrl1の中央部に位置する保存領域より5’側または3’側に終止コドンが出現するようゲノム編集を行って作製した。急性肝傷害モデルマウスとして、四塩化炭素を単回投与した。その結果、傷害の程度は野生型とほぼ変わらず、急性肝傷害からの再生においても、野生型と比べて顕著な差異を認めなかった。 2) 1)に続いて、Ogfrl1遺伝子内を大規に欠損させたノックアウトマウスを作製した。ゲノム上での大規模欠損を持つOGFRL1ノックアウトマウスは、前述1)の終止コドン挿入によるノックアウトマウスと異なり、全長の正常な転写産物、タンパク質が完全に作られなくなる。交配を進めて次世代を得るなかで、現在までに極端な出生率の低下や、新生仔における目視可能な異常は認められていない。 3) 最終年度の計画として掲げたOGFRL1の作用機序の解明に向けて、培養細胞にOGFRL1内包エクソソームを産生させる系の確立と、産生エクソソームをマウスの初代培養肝細やマウス個体へ投与する予備試験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作出方法の異なる複数系統のOgfrl1ノックアウトマウスについて、肝傷害時や傷害からの再生における組織学的特徴などを、野生型と比較しつつ検討することができた。また、最終年度の計画として掲げたOGFRL1の作用機序の解明に向けて、培養細胞にOGFRL1内包エクソソームを産生させる系の確立と、産生エクソソームをマウスの初代培養肝細やマウス個体へ投与する予備試験を開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目に引き続き、複数系統のOgfrl1ノックアウトマウスを用いた解析を行う。戻し交配が進み、ホモ欠損の個体が十分に得られた系統から順次、胎仔肝を中心とした解析を予定している。胎仔肝については、異なる胎齢で採材し、肝組織の構造や遺伝子発現を同時期の野生型マウスの胎仔肝と比較する さらに、OGFRL1のシグナル伝達経路の解析およびOGFRL1の作用機序解明のため作製したOgfrl1に蛍光タンパク質またはタグタンパク質を融合させたコンストラクトを用いて、細胞内局在等の解析に着手する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、概ね使用計画通り物品等の購入を進めてきたが、様々なメーカーの割引期間に購入するなど工夫したため、試薬や消耗品に係る費用が予定より少額となり次年度使用額が生じた。 最終年度では、次年度使用額を利用して引き続き複数系統のOgfrl1ノックアウトマウスの維持・繁殖を進め、個体を用いた解析を進める。また、肝組織のみならず、内在性エクソソームや培養細胞に産生させたエクソソーム中の核酸に対するマイクロアレイ解析を予定している。
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Research Products
(15 results)