2020 Fiscal Year Research-status Report
潰瘍性大腸炎・病態型と腸内細菌叢、T細胞機能バランスおよびHLA型の関連解析
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20K16972
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
金子 元基 東海大学, 医学部, 助教 (80869058)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 炎症性腸疾患 / 腸内細菌叢 / T細胞 / MHC |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで、潰瘍性大腸炎(UC)患者の腸内細菌叢のゲノム解析データをAIを用いて自己組織化マップを作製することで、5-ASAなどの抗炎症薬によって症状が長期コントロール可能な「初回発作型」と、症状のコントロールが難しく再燃と寛解を繰り返す「再燃寛解型」の2つの病態型について、腸内細菌叢の構成との相関が高いことを見出した。一方で、患者末梢血中のT細胞における制御性T(Treg)細胞に対するエフェクターT(Teff)細胞の存在比が、「再燃寛解型」にて高値を示す例の多いことを認めている。本研究では、さらに患者MHC型の偏りを特定することで、T細胞による腸内細菌叢への過剰な応答が発症への主因となるUC病型の同定を企図した。しかし、後述する要因により、臨床研究の開始が遅れている。そこで、昨年度当初は、本院でのIBD外来患者が比較的多い土曜日での血液サンプル回収に対応するため、リンパ球の凍結保存および解凍条件の検討を行った。解凍後に18時間程度培養を行うことで、凍結前のリンパ球の性状を概ね維持することが可能との結果を得た。その後、凍結リンパ球由来DNAを用いたHLAタイピング(HLA-A、-DR)のパイロット実験に成功している。また、先行研究において採取された健常人ボランティアおよび炎症性腸疾患患者(IBD、UCおよびクローン病(CD))・糞便より腸内細菌叢を分離し、ヒトIgAの結合比率を解析することで、患者の適応免疫系が腸内細菌叢を認識する頻度についても調べた。その結果、特にCDにて、健常人に比較し、有意に高いIgA結合率を示し、UCについても一部、高い傾向を認めた。そこで今年度は、IBD患者における腸内細菌叢および適応免疫応答の複数項目を指標として、病型の細分化を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の臨床研究自体の承認は終了しているが、遺伝情報(HLA)に関しては、別途、医の倫理委員会の承認が必要で時間を要した。また、昨年度、研究代表者の勤務病院が変更(東海大学医学部付属八王子病院から東海大学医学部付属病院)したことが、本研究開始を遅延させた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究代表者が継続的に診療しているIBD患者より、研究への参加者を募っている。CD、UC、それぞれ30名程度を目処に、①腸内細菌叢のゲノム解析、②腸内細菌のIgA結合率、③末梢血ヘルパーT細胞のTeff/Treg比、④HLAタイピングの情報を集積し、患者臨床情報との相関を解析する。①~④については、すでに実験系の確立が済んでおり、検体サンプルが集積次第、比較的スムーズにデータが集まると予想される。
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Causes of Carryover |
臨床研究開始の遅れに伴い、実験に使用する消耗品費、腸内細菌叢分析費用ならびに学内研究支援組織・実費請求分が、いずれも予定を下回った。 速やかに研究を遂行し、研究予定の遅れを是正するため、上記必要経費として次年度使用分も使用する。
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