2021 Fiscal Year Research-status Report
膵液内cfDNAを用いたゲノムシーケンスによるIPMN組織亜型の分子病理学的解析
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20K16978
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小林 敏一 山形大学, 医学部, 医員 (60772944)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | IPMN / IPMN組織亜型 / ゲノムシーケンス |
Outline of Annual Research Achievements |
膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal mucinous papillary neoplasm:IPMN)は、前癌病変として捉えられている膵腫瘍疾患で、臨床的な画像診断や術前の病理診 断ではその良悪性の判断 が困難であるが故にその手術適応判断については現在でも盛んに議論されている非常に重要な膵疾患である。IPMNは腫瘍上皮の細胞形 態に基づいて4つの亜分類(胃型:gastric type、腸型:intestinal type、膵胆道型:pancreatobiliary type、好酸性細胞型:oncocytic type)が存在し、IPMNの発 生の研究とともに組織亜型別にも様々な分子異常が報告されている。特にGNASは通常型膵管癌では認められないことからIPMN発生に関与する重要な分子異常と考 えられている。 申請者自身も組織亜型分類を基にした38例のIPMN手術症例の次世代シーケンサーを用いたカスタムパネルによるゲノムシーケンスを施行し、ドライバー遺伝子 として重要とされる KRAS・GNASを中心に、分子病理学的な観点から各々の相互関係を解析している。その解析データや実験手法を用いて、本研究ではIPMN症例 の膵液からcell free DNA(cfDNA)を抽出し、癌パネルを用いてゲノムシーケンスを施行し、得られた遺伝子変異プロファイルを作成することで、内科的な視点 からIPMN組織亜型の特徴を分子病理学的視点で解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ERCPを施行するIPMN症例が年間20-25例、内科的精査を施行した後に外科にて手術を施行されるIPMN症例が年間10-15例と計画していたが、2019年12月頃から続くCOVID-19流行下の影響 により新規のIPMN症例が想定より少ない状況である。しかし、少数例ではあるが、18症例を対象としてIPMN症例から回収した膵液からcfDNAを抽出し、またそのうち8例が手術されており、現時点でも手術件数は微増傾向である。
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Strategy for Future Research Activity |
採取した膵液からのcfDNA抽出は概ね良好な結果であり、試験的に施行している次世代シーケンサーによるゲノム解析も結果は良好である。現在は膵液採取症例、手術症例を増やしつつ、次世代シーケンサーによるゲノム解析を一期的に行う予定とし、抽出DNAをストックしている段階である。5-7月にかけてシーケンスを終了し、9月中旬までにゲノム解析を終了し、データ解析まで行う予定としている。また、2022年度中に得られたデータをもとに学会報告を、2023年度内に論文報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究対象となるIPMN症例が想定より少なく、実験試薬にかかる費用が想定より少額となったため。実際には想定数を見越して事前に試薬を購入に充てているが、物流不安定(COVID-19流行の影響と考えられている)により十分量確保に至っていない。また、学会活動費や旅費に充てている費用も、COVID-19流行の影響により浮いている状況である。余剰分は2022年度に使用する予定である。
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