2020 Fiscal Year Research-status Report
潰瘍性大腸炎と原発性硬化性胆管炎に共通する免疫機構解析による疾患形成機序の解明
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20K16979
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
太田 佑樹 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (80831510)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 原発性硬化性胆管炎 / CD4+T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎(UC)は腸管の炎症を主体とする原因不明の疾患で、近年は本邦を含むアジア諸国でも急速な増加を示している。UCは主に大腸を中心に粘膜障害をきたす疾患であるが、多彩な腸管外合併症をきたすことも知られており、それにより日常生活や予後の悪化を認めることがある。 原発性硬化性胆管炎(PSC)はUCの腸管外合併症の一つであるが、PSCもまた慢性進行性に胆管を破壊する原因不明の難病である。PSC合併UCはUCの約0.8%から8%に合併し、PSCの約40%(欧米では60から80%)に合併する。合併例はUCとPSCの単独症例よりも生命予後が悪いことが報告されている。 本研究の目的はUC、PSCの単独例だけでなく両者を合併しているPSC合併UCに共通して免疫動態に関わるCD4+T細胞を用いて、包括的にその病態を明らかにすることである。 令和2年度は、まず本学における生命倫理審査の承認を取得することから開始し、検体収集のシステムの構築および症例の収集を行った。先に述べた通りPSC合併UCは稀有な症例であるが、当院で進行中の炎症性腸疾患患者の多施設前向きコホート研究をベースにMRCPを用いてPSC合併UC症例のスクリーニングを行った。スクリーニングの結果からは既報より多くのPSC合併UC症例を検出しており、現在、検体収集およびCD4+T細胞の抽出を行っている。今後はUC群、PSC 群、PSC合併UC群、健常群の各10例ほどでRNAシーケンスの解析をすすめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年1月に世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスに関して「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言して以降、本邦においても新型コロナウイルス感染症は拡大し2回にわたり緊急事態宣言が発令されるに至った。当院でも新型コロナウイルスのパンデミック下では新規研究の立ち上げを一時控える事態となったため、倫理審査の承認および検体収集のための電子カルテ上のオーダリングシステム変更を行うまでに時間を要した。また不要不急な検査は延期することが勧められたため、PSC合併UC患者のスクリーニングのためのMRCP施行に影響がみられた。以上により検体収集が予定よりやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの変異種の出現や本邦におけるワクチン接種の遅延のため、本邦における新型コロナウイルスの流行状況は終息の兆しはみえていない。このため本研究における検体収集に関しても今後の進捗はやや不透明な状況であるが、一例ずつ確実に目標数まで血液サンプルを取得しUC群、PSC 群、PSC合併UC群、健常群でRNAシーケンスの解析をすすめる予定である。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗で記載したとおり、新型コロナウイルスのパンデミックによる影響もあって症例収集が予定より遅れているため、本年度にRNAシーケンス等で使用を予定していた支出が行われなかったため次年度使用額が生じた。症例収集ができ次第、翌年度分として予定通り使用する。
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