2021 Fiscal Year Research-status Report
大腸鋸歯状病変に対する網羅的遺伝子発現解析による悪性化リスクの解明
Project/Area Number |
20K16980
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大木 大輔 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40843157)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大腸鋸歯状腺腫(SSAP) / 網羅的遺伝子発現解析 / MSI癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で大腸鋸歯状腺腫の網羅的遺伝子発現解析を本邦で初めて行った。Fresh frozen内視鏡生検検体を用いてSSA/Pの網羅的遺伝子発現解析を行い、SSA/Pの特異的遺伝子発現パターンを同定した。遺伝子発現プロファイルの結果をもとに、Cluster解析、Pathway解析、Gene Set Enrichment (GSEA)解析などBioinformaticな手法で解析を行い、SSA/Pの発生のメカニズムに迫った。また近年、国際的コンソーシアムによる大規模共同研究により大腸癌を分子サブタイプにより分類することが試みられている。このConsensus Molecular Subtypes (CMS)分類では約4000例の遺伝子解析データをサブタイピングし、そのデータを更にネットワーク解析で類似性の高い4つのクラスターに分類している。得られた遺伝子発現プロファイルを用いてCMS分類を施行した。 現在までに得られた結果として①遺伝子発現解析の結果、腫瘍で上昇している遺伝子群は既報でも上昇を認めたものを多く認め、微小生検検体から抽出された高精度の全RNAに対して正確な発現解析データが得られたことを確認できた。②GSEA解析の結果でSSA/PはMSI癌との相関が得られた③CMS callerというBioinformatic解析ツールを用いて解析した結果90% (9/10)で、SSA/PはBRAF変異が多くマイクロサテライト不安定性が認められるサブタイプであるCMS1に分類された。 という結果が得られ、いずれの結果からもSSA/PがMSI癌との相関が示唆され、悪性化のメカニズムに迫れる可能性と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
世界的なCOVID-19流行により研究実施計画よりはやや遅れている。しかし、SSA/PがMSI癌の遺伝子発現プロファイルに強い相関を持つという重要な知見が得られていると考える。得られた結果の公表のため論文作成を行い、2022/4/25にCancer medicine誌にアクセプトされた。
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Strategy for Future Research Activity |
当院のSSA/PのFFPE検体より抽出したDNAを用いて、次世代シークエンサーを用いたBRAF変異を含めた癌関連遺伝子の変異解析を行う。研究室として次世代シークエンサー解析用の専用端末を購入したため解析手法に関しても研究室内での勉強会などを実施し、体系立てていきたいと考える。次世代シークエンサーの解析によりSSA/Pの特異的な遺伝子マーカーの同定を目指す。
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Causes of Carryover |
昨年からの世界的COVID-19流行と本邦における緊急事態宣言のため研究実施がやや遅れているが、既に網羅的遺伝子発現解析により重要な知見が得られている。 次年度は次世代シーケンサーを用いた癌関連遺伝子変異の有無の検索を行いSSA/Pの機序 のより包括的理解及び、SSA/Pの特異的な遺伝子マーカーの同定を目指す。
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