2020 Fiscal Year Research-status Report
潰瘍性大腸炎におけるアミノ酸とアミノ酸トランスポーターの役割の検討
Project/Area Number |
20K16988
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
具 潤亜 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (60847359)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸内環境 / 潰瘍性大腸炎 / アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
潰瘍性大腸炎は、大腸特異的に増悪寛解を繰り返す原因不明の慢性的な炎症性腸疾患で近年になり急激に患者数が増加している。世界的に、以前より欧米で患者数が多く、患者数の上昇はアジア諸国で特に顕著であることから、食生活の変化や、伴って生じる腸内環境変化が患者増加の一因である可能性が推測される。本研究では、肉類に多く含まれる栄養素のアミノ酸にとくに注目し、アミノ酸やアミノ酸トランスポーターと炎症性腸疾患のかかわりの解明を目的としている。 まず予定通り、食事の変化による腸内環境変化についてのベース研究を進めた。アミノ酸の腸管内動態を調べるため、メタボロミクス解析により小腸、盲腸、大腸での各種アミノ酸量を解析したところ、アミノ酸のほとんどは小腸に比べて大腸での検出量は微量となることが確認され、小腸でほぼ吸収されることが推測された。更に、特殊食として必須アミノ酸であるロイシン制限食を作成して投与を行い観察した。食餌摂取量や活動性に明らかな変化はないが、アミノ酸制限食マウスでは体重増加が鈍化し小柄となることが確認された。しかし、重要なこととして、小腸や大腸の長さには明らかな差異、変化はなく、腸管組織を使用した遺伝子発現量解析においても、アミノ酸トランスポーター、炎症性サイトカイン等索範囲内で変化なく、病理組織学的な変化や、細胞増殖についてki67による免疫染色で検討を行ったが両群間に明らかな差を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
a初期検討としてのアミノ酸調整食による基礎データは順調に採取できている。解析経過の中で、アミノ酸調整食によりマウスの成長(体格)に差が生じるため、飲水量が同等であることを前提としたDSS(デキストラン硫酸ナトリウム)腸炎モデルでは、群間で条件を合わせることが難しいことが注意点として分かってきた。そのため、DSS腸炎については食餌としてアミノ酸含有量の差があるが、成長や飲水量に影響がない食餌による比較検討を要すると考えている。このことから、アミノ酸調整食による腸炎モデルはIL-10欠損腸炎が好ましいと考えられ、同モデルのコロニー拡張を開始しており、当初の研究予定から大幅な変更の必要はなく、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はIL-10欠損腸炎モデルマウスのコロニー拡大を行い、低ロイシン食の投与による腸炎発症と炎症レベルの変化がおこるか検討を行う予定である。具体的には、コントロール群で腸炎発症が想定される15週齢ころまで特殊食を与え、観察ポイントにおいて腸管組織からmRNAを抽出し、定量 PCRにてアミノ酸トランスポーターや短鎖脂肪酸受容体の発現レベルの変化、炎症性サイトカイン、抗菌ペプチド等の遺伝子発現レベルの解析を行う。腸管内容物も回収し、メタボロミクス解析による腸内栄養素の変化や、16SrRNA遺伝子解析による腸内細菌叢の網羅的解析を行い包括的に腸内環境と腸炎との関連の究明を試みる。特に、両群間で変化がある場合は、更に腸間膜リンパ節細胞や、腸組織内に浸潤した炎症細胞をフローサイトメトリーで解析する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染問題のため、情報収集の旅費が予定より抑えられた。また、研究の遂行状況は概ね問題ないが、上記の通りDSS腸炎ではなくIL-10欠損マウスでの解析に重点をおくためDSS腸炎用の試薬コストが抑えられた。IL-10欠損マウスを十分確保するため、動物施設使用料として使用する計画である。
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