2020 Fiscal Year Research-status Report
The use of 3D cell culture to study the mechanisms underlying aberrant ECM remodeling in pancreatic cancer stroma
Project/Area Number |
20K16989
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田中 啓祥 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20781941)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵がん / 細胞外基質 / 線維化 / 三次元培養法 / 線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、膵がん間質の線維化組織における線維芽細胞ならびに細胞外基質(ECM)線維の「異常配向」獲得の分子機序を解明することである。膵がんの特徴である間質の顕著な線維化組織において、線維芽細胞ならびにCollagenやFibronectinなどのECM線維は異常な配向・構築を示す。こうしたECM異常が、膵がん組織の硬化を来し、病態進展および治療抵抗性獲得に寄与することが明らかとなってきている。しかし、細胞ならびにECM線維の異常配向の獲得機序は、従来の実験モデルでは詳細な分子機序の解析が困難であり、詳細が不明である。令和二年度には、研究代表者が独自に確立した立体培養法を応用したin vitro線維化モデル(Biomaterials 2019)を用い、ECM要素の配向獲得の時間発展を可視化・追跡し、配向の獲得に寄与するシグナル経路の解析を行った。さらに、ECM要素毎の時間発展の様態を比較・検討することにより、異常構築獲得には再現性の高い秩序が存在することが明らかとなった(manuscript in preparation)。また、当初計画では膵がん由来線維芽細胞単独で構築したin vitro線維化モデルの利用を予定していたが、膵がん細胞と正常線維芽細胞との三次元共培養系を確立し、正常な線維芽細胞が膵がん細胞との共培養を通じ異常ECM構築を獲得する過程のin vitroでの再現にも成功した(Biomaterials 2020)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1)in vitro線維化モデルを利用したECM構築異常の機序解析をするための、siRNA導入条件を確立し、とりわけECM受容体に着目したシグナル経路の解析を行うこと、2)薬理学的阻害実験やsiRNAによるノックダウン実験により細胞内シグナル伝達機序の解析を行うことを予定していた。1)については、安定的・効率的にsiRNAを導入する条件を確立し、ECM構築異常の獲得に寄与するECM受容体の候補を複数得た。2)については、ECM構築異常の獲得に関わる細胞内シグナル伝達経路の解析が順調に進んでいる(manuscript in preparation)。また、当初計画では令和三年度での実施を予定していたプローブの開発・利用についても、令和二年度に着手済みであり、ECMリモデリングの時間発展をさらに詳細するための手段の整備が既に進んでいる。さらに、当初計画では予定していなかった展開もあった。すなわち、当初膵がん由来線維芽細胞単独で構築したin vitro線維化モデルを解析に利用する予定であったが、膵がん細胞と正常線維芽細胞との三次元共培養系の確立に成功した(Biomaterials 2020)。同共培養系では、正常な線維芽細胞が膵がん細胞との共培養を通じ異常ECM構築を獲得する過程が再現されており、当初計画されていた実験から得られる知見を補完・発展させることができると期待される。以上のように、本研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和三年度以降は、当初計画通り、ECM異常構築の獲得・維持・発展に関わるシグナル経路を1)ECM受容体、2)細胞内のシグナル伝達機序の両面から明らかにしていく予定である。そのために、令和二年度に開発・利用に着手したECMプローブも本格的に導入しつつ、方法論を確立したsiRNAノックダウンや、各種薬理学的阻害実験を行いながら、ECM異常構築への影響を解析していく。上記解析を、当初計画の膵がん由来線維芽細胞単独でのin vitro線維化のみならず、新たに確立した膵がん細胞+正常線維芽細胞の新規三次元共培養系で並行して行うことで、より確かな知見を得る。以上を通じ、本研究の目的である、膵がん線維化組織におけるECM異常構築機序を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初計画において想定していたより、ECM構築異常の時間発展の可視化・解析が効率的に進捗した。また、今年度はコロナ禍により、大学構内への立入が制限された時期があった。さらに、11月中旬~12月にかけて、育児に伴う休暇を取得した。以上の複合的な理由により、次年度使用が生じた。研究経費は当初計画に沿ってECM構築異常の解析に必要な三次元培養系の構築および分子機序の解析のための各種siRNAや小分子阻害剤の購入、さらには令和三年度以降に利用が本格化するECMプローブの開発・利用などに効果的に使用し、引き続き効率的に研究を推進していく予定である。
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