2020 Fiscal Year Research-status Report
肝トランスポーターに基づいたNASH発症機序の解明
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20K16990
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
谷口 達哉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任講師 (70518232)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トランスポーター / 非アルコール性脂肪性肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者の肝トランスポーターの発現変化や機能異常を明らかにすることにより、NASHの原因を解明し、治療創薬につなげることを目的とする。 これまでのところ、NASH症例の血清と肝臓組織を26検体、非NASH症例の検体を22検体ずつ集積している。採取した肝臓検体からmRNAを抽出し、real time PCRにて各種肝トランスポーター(OATP1,OATP3,MRP2,MRP3,NTCP)のmRNA量を測定したところ、いずれのトランスポーターにおいても、NASH症例と非NASH症例では、mRNA量の発現量に有意な差は認めなかった。更に肝組織から蛋白抽出を行い、ウエスタンブロッティングにて各種トランスポーター(OATP1,OATP3,MRP2,MRP3,NTCP)のタンパク定量を行った結果、いずれのトランスポーターにおいても、NASH症例のトランスポーターは非NASH症例と比較し、発現量が有意に低下していた。また、発現量の低下は肝臓の線維化と有意に相関していることが明らかになった。同様にリン酸化トランスポーターを検出する抗体を使って、ウエスタンブロッティングを行った結果、NASH症例において、各種トランスポーターのリン酸化タンパクは有意に減少していた。 以上より、NASH症例はRNAレベルでは発現量に差は認めないものの、成熟したトランスポーターが減少しているために胆汁酸やLPSが細胞外に排泄されず、肝細胞障害を来していることが示唆された。これらのトランスポーターの機能改善を促す物質、あるいは代替する物質を投与することにより、細胞障害性物質の細胞外排泄機能を改善し、NASH治療につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、NASH症例と非NASH症例の血清、肝組織を収集し、各種肝トランスポーターのmRNAの発現量、タンパク量の測定を行うことができている。また、研究前の予想通り、肝トランスポーターのタンパク量が低下してることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究予定として、抽出したタンパクを用いて、MS/MSを行い、各種トランスポーターのカルボキシル化の解析、及び免疫沈降を行い、ユビキチン化されたトランスポーターを解析し、翻訳後修飾の変化を検討する予定である。 また、抽出した血清を用いて、DNAシークエンスを行い、トランスポーターの遺伝子変異の有無についても、解析予定である。 同時に、検体の収集も引き続き行っていく。
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