2021 Fiscal Year Annual Research Report
肝トランスポーターに基づいたNASH発症機序の解明
Project/Area Number |
20K16990
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
谷口 達哉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任講師 (70518232)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | トランスポーター / 非アルコール性脂肪性肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者の肝トランスポーターの発現変化や機能異常を明らかにすることにより、NASHの原因を解明し、治療創薬につなげることを目的とする。最終年度は、NASH症例の血清と肝臓組織を30検体、非NASH症例の検体を30検体ずつ集積し、前年度より検体数を増加させた。昨年度までの成果として、NASH症例は非NASH症例と比較し、肝トランスポーター(OATP1,OATP3,MRP2,MRP3,NTCP)はmRNAの発現量に差はないものの、タンパクの産生量においては、NASH症例が有意に低下していることを確認している。同様にリン酸化トランスポーターを検出する抗体を使って、ウエスタンブロッティングを行った結果、NASH症例において、各種トランスポーターのリン酸化タンパクは有意に減少していることが明らかになった。 以上の結果から、細胞質内の何らかの修飾異常により成熟したトランスポーターが生成されず、細胞壁に正常なトランスポーターが輸送されないため、肝細胞に有害な胆汁酸やLPSが細胞外に排泄されず、肝細胞障害を来していることが予想された。そこで、最終年度では細胞内と細胞壁それぞれのトランスポーター蛋白を抽出したところ、NASH症例では細胞壁に付着しているトランスポーターは非NASH症例と比較して減少していた。更にトランスポータータンパクの糖鎖付加の有無を調べるため、PNGaseFを用いてウエスタンブロッティングを行ったところ、非NASH症例では検出バンドが20kDaほど低い位置で確認されたが、NASH症例ではバンドの位置は変化しなかった。 このことから、細胞質内での不完全な糖鎖付加により、成熟したトランスポーターが細胞壁に輸送されなくなることが示唆された。今後、脂肪と糖鎖付加の低下の関連性について、研究を行う必要がある。
|