2021 Fiscal Year Research-status Report
クローン病患者おける抗IL-12/23p40抗体の治療効果予測因子の同定
Project/Area Number |
20K16992
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤岡 審 九州大学, 大学病院, 助教 (90814400)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | クローン病 / 抗IL-12/23p40抗体 / Th分化 / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの検討により抗IL-12/23p40抗体(以下、UST)療法によるTh17細胞への分化の抑制が確認されたが、これが同薬特有の現象なのか、それとも炎症沈静化による副次的な影響であるのか検証が必要となった。そのため、新規に抗TNFα抗体(以下、TNF)を導入する10名の活動期クローン病を対象に末梢血中のCD4陽性細胞におけるTh分化の変化をフローサイトメトリーにより調べるとともに、デジタルカウント遺伝子発現解析法により腸管粘膜中の遺伝子発現の変化を解析し、UST療法との違いを比較することとした。 各治療で治療効果が得られた症例(UST療法12例、TNF療法9例)を比較したところUST療法では8例(67%)でTh17細胞が減少していた一方で,TNF療法ではTh17細胞の減少は1例(11%)にとどまった(P=0.024)。一方で制御性T細胞はTNF療法では8例(89%)で増加していた一方、UST療法では8例(67%)での増加にとどまった(P=0.043)。遺伝子発現解析ではUST療法で11種の遺伝子発現が亢進し、19種の遺伝子発現が抑制されていた。抑制された遺伝子の詳細を解析したところTh17分化経路と有意な関連が確認された。TNF療法では4種の遺伝子発現が亢進し、30種の遺伝子発現は抑制されていた。興味深いことに、変動した遺伝子は両治療の間で全く重複がみられなかった。 本研究からクローン病におけるUST療法による腸炎抑制はTh17細胞の抑制を通じて行われている可能性が示唆された。TNF療法とは異なるメカニズムであることが遺伝子発現解析を通じて確認されたことより、それぞれの治療不応時や効果減弱時における薬剤の切り替えが有望な治療選択肢であることを裏付ける結果と考えられた。 以上の結果について論文投稿を行い、Digestion誌に受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗IL-12/23抗体p40抗体投与治療例における治療前後での末梢血リンパ球のTh分化の変化、腸管での遺伝子発現(mRNA)の変動が抗TNFα抗体製剤治療例とは異なる機序を介して生じていることが確認され、いずれかの治療薬で効果不十分な症例に対してのスイッチ治療の妥当性を示すことができた。さらに、本年度はその研究成果を論文化することができた。一方で、当初計画に含めていた血清や腸管組織を用いたmiRNAを含む遺伝子解析は対象例からの検体採取に不足を生じ、上記結果との関わりを十分に解析することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
クローン病と同様に慢性炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎においても、近年IL-12/23p40抗体を用いた治療が保険収載された。同疾患での治療前後におけるTh分化および遺伝子発現の変化を現在解析している。
|
Research Products
(2 results)