2020 Fiscal Year Research-status Report
膵臓がんに対する次世代型免疫療法開発にむけた腫瘍細胞に特異的な糖鎖構造の解析
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20K17001
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
大熊 遼太朗 昭和大学, 医学部, 助教 (30833769)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵臓がん / CAR-T / レクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
固形がんに対するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法(CAR-T療法)の新規開発を目指すため、適切な治療標的抗原の同定を行ってきた。膵臓がん患者PDXモデルならびに膵臓がん患者の組織検体を用いた検討より、抗がん剤耐性に関与し、かつ膵臓がん患者の予後不良因子である分子Olfactomedin-4(OLFM4)に加えて、polymeric immunoglobulin receptor(PIGR)分子を同定し、治療標的抗原の候補として研究を行った。我々の研究により、OLFM4・PIGR分子は膵臓がんの腫瘍細胞のみならず、一部の正常細胞にも発現を認めることが判明し、強力な治療(CAR-T療法)を行う標的抗原としては、正常細胞をも傷害してしまう可能性がある。そこで、腫瘍細胞上の糖鎖構造が正常細胞と異なることに着目し、腫瘍細胞に特異的な糖鎖修飾を認識するレクチンの同定を試みた。膵臓がん患者サンプルと健常者のサンプルを用いて、OLFM4・PIGR上の糖鎖を認識するレクチン解析を行い、3種類のレクチン-A・B・Cの測定値が、がん患者と健常者で異なっている事が判明し、両者を識別できる可能性が示唆された。また膵臓がん患者の腫瘍組織を用いてレクチンとPIGRとの二重免疫染色を行ったところ、レクチン-Aに関して腫瘍細胞において多くの症例で二重染色陽性となった。一方、正常組織においては、PIGRは陽性であるがレクチン-Aが共に陽性となった症例は少数であった。また、蛍光標識を施したレクチン-A及びPIGRに対する抗体を用いて蛍光染色を行ったところ、同様の結果が得られた。レクチン-Aは正常細胞には発現していない症例が多く、PIGR分子と組み合わせて検討することで腫瘍組織と正常細胞を分別することに応用できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗癌剤耐性や予後不良に関与する分子としてOLFM-4に加えPIGRを同定し、CAR-T療法の標的抗原の候補として研究を行った。しかしOLFM4・PIGRの発現解析では腫瘍細胞だけでなく一部の正常細胞にも発現することが判明し、強力な治療(CAR-T療法)を行う標的抗原としては正常細胞をも傷害してしまう可能性がある。 そこで膵臓癌患者と健常者サンプルを用いてOLFM4又はPIGRにおける糖鎖発現解析を行った。12種類のレクチンで検討すると、PIGRではレクチン-A・B・Cの測定値が癌患者と健常者とで異なる事が判明し、両者を識別できる可能性が示唆された。続いてレクチン-A・B・Cを用いて、膵臓癌患者の腫瘍組織検体を用いた免疫染色を施行した。腫瘍組織中には正常細胞と腫瘍細胞の両方が含まれており、レクチン-Aについては正常細胞に比較して腫瘍細胞で強く染色されている症例が多く、正常細胞と腫瘍細胞との識別に有用な可能性がある。次にレクチン-Aに着目して検討を行い、レクチン-AとPIGRの二重免疫染色を実施した。PIGR分子の発現を認める膵臓癌組織8症例、正常膵臓組織8症例で解析を行った。その結果、腫瘍組織では7/8症例でレクチン-AとPIGRがともに陽性となり、正常組織では2/8症例においてのみ陽性となった。また蛍光標識を施したレクチン-AとPIGRに対する抗体を用いて蛍光染色を行い、免疫染色と同様の結果が得られた。以上より、レクチン-Aは正常細胞には発現しない症例が多く、PIGRと組み合わせた検討で腫瘍細胞と正常細胞とを分別できる可能性が示唆された。 PIGR分子で正常細胞と腫瘍細胞とを識別できる可能性が示唆されたため、今後は糖鎖修飾を受けたPIGR分子を標的としたCAR-T療法の研究を進めていく。そのため、腫瘍細胞に特異的な糖鎖修飾を認識するレクチンを用いたCAR-T療法の研究を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
同定したレクチンA及びPIGRに対する抗体を用いて次世代型のCAR-T細胞の作製及び治療法の開発を行う。そのためにまずはPIGRに対するオリジナルの抗体作製を行い、その遺伝子情報を得てCAR-T細胞を作製する。レンチウイルスベクター及びレトロウイルスベクターを用いたCD19に対するCAR-T細胞の作製は既に我々の研究室で行っており、その技術を用いて、PIGRに対する抗体情報及びレクチン情報を基に糖鎖PIGRと特異的に結合するCARを構築する。また、ウイルスベクターを用いて健常人末梢血又はJURKAT細胞に遺伝子導入してCAR-T細胞を樹立することを予定している。このように作製したPIGRと特異的に結合するCAR-T細胞内に、並列な状態で、腫瘍細胞上のPIGR糖鎖構造に特異的に結合するレクチンを搭載させ、レクチンと抗体の両方のシグナルが入ったときのみONとなるdual-CARシステムの構築を目指して研究を推進していく。OLFM4に関しては前実験にて良好な結果が得らえれていないため、優先順位としてまずはPIGRに対するCAR-T療法の開発を行う。 また、2020年度までの実験により、腫瘍細胞上の標的抗原の糖鎖修飾を認識するレクチンとしてレクチン-Aが候補として挙げられたが、レクチンの種類は数百種類と多いため、まだ検討できてないレクチンが多い。そこで、レクチンアレイを用いて、多数のレクチンを網羅的に検討する予定であり、腫瘍細胞に発現する糖鎖構造のみを認識するレクチンの同定を前実験と並行して試みる。
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Causes of Carryover |
支払い予定の物が次年度精算となったため。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] High expression levels of polymeric immunoglobulin receptor are correlated with chemoresistance and poor prognosis in pancreatic cancer.2020
Author(s)
Ohkuma R, Yada E, Ishikawa S, Komura D, Kubota Y, Hamada K, Horiike A, Ishiguro T, Hirasawa Y, Ariizumi H, Shida M, Watanabe M, Onoue R, Ando K, Tsurutani J, Yoshimura K, Sasada T, Aoki T, Murakami M, Norose T, Ohike N, Takimoto M, Kobayashi S, Tsunoda T, Wada S.
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Journal Title
Oncology Reports
Volume: 44
Pages: 252-262
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] High expression of olfactomedin-4 is correlated with chemoresistance and poor prognosis in pancreatic cancer.2020
Author(s)
Ohkuma R, Yada E, Ishikawa S, Komura D, Ishizaki H, Tamada K, Kubota Y, Hamada K, Ishida H, Hirasawa Y, Ariizumi H, Satoh E, Shida M, Watanabe M, Onoue R, Ando K, Tsurutani J, Yoshimura K, Yokobori T, Sasada T, Aoki T, Murakami M, Norose T, Ohike N, Takimoto M, Izumizaki M, Kobayashi S, Tsunoda T, Wada S.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 15
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access