2021 Fiscal Year Research-status Report
若年時の高脂肪食摂取が上皮バリア破綻をもたらす機構と疾患発症における意義の解明
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20K17007
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
中田 一彰 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 肝炎・免疫研究センター 消化器疾患研究部 研究員 (20849244)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高脂肪食 / 腸上皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ライフスタイルの変化に伴う若齢時からの肥満や代謝制御異常が増加しているが、これらの要因が将来的な悪性疾患の発症リスクにどの程度関与するかの詳細は不明である。本研究では、消化管腔と体内を隔て、食事の影響を最前で受ける腸上皮に着目し、若年時からの高脂肪摂餌が腸管機能に及ぼす影響を詳細に解析するとともに、その分子メカニズム並びに悪性疾患発症リスクに及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。これまでの研究では、高脂肪食のラードを飽和脂肪酸、または不飽和脂肪酸に置き換えた餌を作製し、これら異なる脂質が腸管に及ぼす影響を解析した結果、不飽和脂肪酸含有高脂肪食摂餌群と比較して、飽和脂肪酸含有高脂肪食摂餌群で増殖細胞が増加していることを見出した。今年度は、飽和脂肪酸の上皮細胞増殖亢進作用が、腸上皮細胞への直接作用か否かを検討するために、マウス小腸よりクリプトを単離し、ゲル中で三次元培養するオルガノイド培養系を用いたに検証を行った。オルガノイド培養系に各種脂肪酸を添加培養し、オルガノイドあたりのクリプト形成頻度を解析した結果、飽和脂肪酸添加によりクリプト数が増加したことから、飽和脂肪酸は直接上皮細胞に作用して細胞増殖を促進することが明らかになった。さらに大腸癌マウスモデルであるAPCMin/+マウスを用いて、脂質の種類の違いが疾患発症に及ぼす影響を検討した結果、不飽和脂肪酸含有高脂肪食摂餌群と比較して、飽和脂肪酸食群で腫瘍形成が促進されることが明らかになった。以上から、飽和脂肪酸による腸上皮恒常性の破綻が腫瘍形成に寄与することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、飽和脂肪酸が腸上皮細胞に直接作用するかについて小腸オルガノイド培養にて解析した結果、飽和脂肪酸がオルガノイドのクリプト数を増加させることを明らかにした。さらに、若年時の高脂肪食摂餌が疾患の発症に及ぼす影響について、大腸がんマウスモデルを用いた解析を行った。その結果、飽和脂肪酸が腫瘍形成を促進することを明らかにした。目標に設定した若年時からの高脂肪食摂餌が惹起する腸上皮恒常性の破綻が疾患発症に寄与することを明らかにしたことから今年度の目標は達成しており、更にメカニズムの解析を目指したトランスクリプトーム解析にも既に着手できている点から、本研究はおおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、以下の項目について解析を進める。 若年時の高脂肪食摂餌による疾患発症のメカニズムの解析: 飽和脂肪酸が増殖細胞の増加を促進する点について、食事脂質の作用機序や分子メカニズムを解析する。高脂肪食を摂餌させたマウスより腸上皮細胞を採取し、遺伝子発現パターンを網羅的に解析すると共に、脂肪酸が影響を及ぼす細胞の特定を明らかにする。更に遺伝子発現解析結果に基づき、阻害剤やノックアウトマウスを用いたメカニズムの検証を行う。
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