2023 Fiscal Year Annual Research Report
若年時の高脂肪食摂取が上皮バリア破綻をもたらす機構と疾患発症における意義の解明
Project/Area Number |
20K17007
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
中田 一彰 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所, 臨床連携研究室 研究員 (20849244)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高脂肪食 / 脂肪酸 / 腸上皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、管腔と体内を隔て、食事の影響を最前線で受ける腸上皮に着目し、近年の食事内容の変化、特に食事中に含まれる脂質の種類の違いが腸上皮へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、高脂肪食のラードを飽和脂肪酸、または不飽和脂肪酸に置き換えた餌を作製した。さらに、食事中の脂質の種類の違いがもたらす影響が、悪性疾患の発症ならびに遷延化にどの程度関与するかについてマウスモデルを用いて検討した。不飽和脂肪酸食摂餌マウスと比べて、飽和脂肪酸食摂餌マウスで増殖細胞が増加し、大腸癌マウスモデルであるApcMin/+マウス、炎症-発癌モデルを用いた検討では、不飽和脂肪酸食摂餌群と比較して、飽和脂肪酸食摂餌群で腫瘍形成が促進された。飽和脂肪酸による上皮細胞の増殖亢進は、マウス小腸オルガノイド培養系を用いた検討においても認められ、腸上皮細胞への直接作用と考えられた。今年度は、組織染色により増殖細胞以外にも飽和脂肪酸食摂餌の影響を受ける細胞がいるか検索し、パネート細胞が増加することを見出した。飽和脂肪酸が上皮細胞の増殖を促進する分子メカニズムを明らかにするため、腸上皮細胞のシングルセル解析を実施した結果、コントロール食摂餌群と比較して、飽和脂肪酸含有高脂肪食摂餌群ではdrug metabolism、platinum drug resistance、glutathione metabolism、DNA replicationに関与する遺伝子発現が低下していることが明らかになった。さらに組織染色により、飽和脂肪酸が結合する蛋白質を発現する細胞が、飽和脂肪酸食摂餌群において増加することを見出した。当該分子の阻害剤により、飽和脂肪酸による細胞増殖亢進ならびにパネート細胞増加、腫瘍形成促進作用が失われたことから、飽和脂肪酸による腸上皮恒常性の破綻と腫瘍形成促進作用は、本分子を介することが明らかになった。
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