2022 Fiscal Year Annual Research Report
臓器間ネットワークを介したセロトニン発現変化の肝病態マーカーとしての有用性の検証
Project/Area Number |
20K17016
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
薛 徹 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (40837184)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セロトニン / 臓器連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス部分肝切除モデルを対象として、肝障害の程度及び回復に応じた小腸での5HT産生量、血中5HT量の変化、肝機能の経時的変化の関連を解析した。その結果の基づき、肝細胞癌や転移性肝腫瘍のため部分肝切除が施行された22症例(肝切除群)と急性肝障害のため当院で加療した20症例(肝障害群)の肝機能と血中5HT量の経時的な変化と臨床経過の関連性を検討した。 マウスでは、30%部分肝切除後に血中5HT値は平均で47%低下し、術後7日には術前と同等の値まで上昇し、状態も回復した。基質である血中トリプトファン(Trp)は術前の75%まで低下を認め、5HT産生の律速酵素であるTPH-1の小腸での発現は肝切除後に約150%に発現上昇した。ヒト肝切除群では、術後1週の血中5HT濃度が有意に(29%)低下し、回復過程で血中5HT濃度が有意に上昇、術後1週間で元値に復した。切除範囲に応じて部分切除と亜区域切除以上の2群に分けて5HTの変動を比較すると、切除侵襲の大きな群でより低下が顕著であった。また、ヒトでの種々の原因による肝障害群では肝障害極期と回復時点を比較すると、極期では5HTが32%に低下していた。さらに、肝障害で初診した際の血中5HT濃度が、1週後の肝機能回復程度と有意に相関した。また、ヒト肝障害群での血中Trp値は、回復時点と比較して極期では低下していた。以上のように、急性肝障害時に血中5HTとその基質であるTrpが低下することが明らかとなった。肝障害条件下で5HT産生が亢進するプロセスが明らかとなり、さらに5HTの低下率と肝障害の程度の相関からは肝障害に対する生体反応としての肝再生に伴う5HT消費が示唆された。今後の研究により、神経ネットーワークと5HTを介した肝再生へと効果的に介入し、肝再生を促進する治療法の開発が見込まれる。
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