2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔粘膜上皮細胞シート移植による食道再生医療後の長期安全性評価基盤の構築
Project/Area Number |
20K17024
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
丸屋 安広 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (20817085)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食道癌 / 内視鏡下粘膜下層剥離術(ESD) / 口腔粘膜上皮細胞シート / 53BP1 / genomic instability / 再生医療等製品 / 安全性 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】本研究の目的は早期食道癌に対するESD(内視鏡下粘膜下層剥離術)後食道潰瘍への自家口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床研究のフォローアップ期間中に施行された食道生検組織のサンプルを用いて、移植長期経過後の発癌リスクを解析することで、再生医療製品と細胞シート移植後組織の長期安全性評価方法を新たに構築することである。 【方法】53BP1はDNA損傷部位に結合する遺伝子損傷応答タンパクで、53BP1の核内集積あるいは増殖マーカーであるKi67との共発現は異常な遺伝子応答を示し、genomic instabilityにつながることが示唆されている。口腔粘膜上皮細胞シート移植による食道再生医療後組織の遺伝子損傷応答について53BP1を用いて解析した。 食道再生医療後の経過フォロー中の内視鏡で前癌病変が疑われ施行された食道生検を対象とし、53BP1とKi67の二重標識免役染色法で染色した。細胞シート治療を行っていないESD後フォロー中の食道生検5例を比較対照群とした。 【結果】細胞シート移植後組織の病理診断はEsophagitis 3例、Intraepitelial neoplasia2例で、細胞シート移植なしの生検組織の病理診断はEsophagitis5例であった。蛍光免疫組織染色では細胞シート移植後の有無にかかわらず53BP1単独、およびKi67との局在が一定の割合で認められた。 【結語】細胞シート移植後組織の発癌性を含めた安全性評価には慎重な経過観察が必要であるが、適切な評価法は確立されていないのが現状である。食道ESD後の組織では口腔粘膜上皮細胞シート移植の有無にかかわらず、regenerative stressを反映した遺伝子損傷応答が増加した可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食道再生医療後の経過フォロー中の内視鏡で前癌病変が疑われ施行された食道生検を対象とし、生検組織のgenomic instabilityを解析することは出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
【口腔粘膜上皮細胞シートに関する網羅的遺伝子解析】 遺伝子解析は、次世代型シーケンサーを使用する。食道再生医療を行った際に凍結保存されている口腔粘膜上皮細胞シート、前癌病変が疑われて得られた生検試料、もとの癌組織(ESD検体癌部)の3試料を用いて、癌関連遺伝子を中心とした網羅的遺伝子発現解析(RNA-Seq)と変異解析を行う。 【口腔粘膜上皮細胞シートの癌化リスクの解析】 上記で得られたデータを照合し口腔粘膜上皮細胞シートのがん関連遺伝子発現プロファイル、変異プロファイルと移植後組織のgenomic instabilityとの関連を解析する。
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Causes of Carryover |
東京女子医大に患者の口腔粘膜シートの凍結標本があり、それを用いた解析が必要であるが、コロナ禍で出張が出来ず進まなかったため。次年度は、上記解析を行いつつ当初予定していた「口腔粘膜上皮細胞シートに関する網羅的遺伝子解析」ならびに「口腔粘膜上皮細胞シートの癌化リスクの解析」を行う予定である。
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