2021 Fiscal Year Research-status Report
Pathophysiological mechanisms of age-related exacerbation of steatohepatitis and skeletal muscle atrophy
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20K17032
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
石塚 敬 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (70870327)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 / 加齢 / 脂質代謝 / サルコペニア(筋萎縮) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では脂肪肝炎と予後増悪因子である加齢性筋萎縮(サルコペニア)の病態の関連を明らかにすることを目的とし、脂肪供給過多を背景とした肝臓の代謝系の破綻、それに伴う栄養素の再配分の障害が骨格筋の栄養障害を来すとの仮説に基づいて実験を行っている。 令和3年度はヒトのサルコペニアの特徴である速筋優位の筋萎縮をきたす加齢マウス+HFDモデル (Ishizuka K, Kon K et al. J Gastroenterol Hepatol. 2020) を用いた基礎的検討を行った。高脂肪食を摂取した55週齢のC57Bl6/Jマウス(加齢マウス)の肝臓は高脂肪食を摂取した若年マウスの肝組織と比べて顕著な脂肪肝炎の増悪をきたし、さらに四肢の筋力の低下と腓腹筋線維の横断面積の減少、速筋/遅筋の重量比の減少を認めた。腓腹筋組織を用いた解析では、骨格筋のIL6およびTNFαの発現が亢進していた。肝組織ではmyotrophic factorとして知られるIGF-1およびヘパトカインの一つであるselenoprotein Pの発現が減少する一方で、骨格筋内のユビキチンリガーゼ(Atrogin-1、MuRF-1)およびselenoprotein Pの受容体であるLRP1のmRNA発現が亢進していた。これらの事象から、高齢・高脂肪食負荷の状況では肝組織内の脂質代謝の不均衡と肝内脂質の量的・質的変化、脂肪毒性の増悪が脂肪肝炎の進展に寄与しただけでなく、IGF-1およびヘパトカインの発現を変化させることで骨格筋組織の炎症およびユビキチン化を促進し、骨格筋萎縮を惹起したことが示唆された。これらの結果は脂肪肝炎患者のサルコペニアの発症において肝由来の因子が骨格筋組織のユビキチン化を惹起し、肝筋連関により筋萎縮を生じる可能性を示した。本研究は第21回日本抗加齢医学会総会の口演に採択され、結果の一部を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究では、加齢により非アルコール性脂肪肝炎の進行を来たす機序としてこれまで私たちが明らかにしてきた肝組織における脂質代謝の鈍化、脂質組成の変化が肝病態の進行に影響しているに留まらず、肝筋連関により骨格筋の炎症の増加、サルコペニアを示唆する結果が得られた。実験結果については学会発表を介して報告することができた。今後、肝筋連関を生じる機序と構成因子についてより詳細な検討が必要だが、基本的な方針をほぼ固められたため、予定通りの進捗状況と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪肝炎の病態における栄養素再配分の障害を明らかにするために、これまでの研究で用いた若年マウスおよび加齢マウスの高脂肪食負荷モデルから採取した肝組織、血清および速筋(足底筋)および遅筋(ひらめ筋)、速筋+遅筋(腓腹筋)について、液体クロマトグラフィー+質量分析計(LC/MS)を用いたメタボロミクスおよびリピドミクス解析を行い、肝臓における代謝物・脂質の変化が循環血液および骨格筋の脂質組成および代謝産物に与える影響を検証する。また、肝臓で合成され、遅筋よりも速筋で多く代謝に用いられるクレアチンリン酸の肝臓における合成、骨格筋の貯留に変化があるかを確認。もし変化があれば、クレアチンの代謝系の変化も確認する。高脂肪食摂取加齢マウスの肝臓ではケトン体合成が抑制されており、ケトン体の代謝系も解析する。脂肪肝炎の栄養環境で肝細胞障害および速筋優位の萎縮を生じる機序を解明する。初代培養肝細胞と骨格筋筋芽細胞C2C12細胞を用いて、培地内にHFD投与高齢マウス(もしくは若年マウス)由来の血清を投与して反応を見る。病態のキーとなる脂質ないしは代謝産物が同定されれば、その基質を添加して培養細胞に与える影響を観察する。肝細胞については脂肪合成、ミトコンドリア機能、オートファジー、小胞体ストレス、酸化ストレス、アポトーシスを解析する。筋芽細胞については総核数の変化を計測すると共に、形成された筋管細胞の筋線維型を遅筋型、速筋型ミオシン重鎖を認識する抗体を用いて染色し、経時的なミオシン重鎖発現比率の変化をみることで速筋・遅筋への影響を観察する。OilRedO染色で脂肪化、核染色でアポトーシスを評価し、脂肪肝炎および骨格筋萎縮を裏付けになるデータ収集を行う方針である。
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