2022 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞における銅や遊離脂肪酸による細胞障害に対する亜鉛の保護作用の検討
Project/Area Number |
20K17037
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
草永 真志 産業医科大学, 医学部, 助教 (30614200)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 飽和脂肪酸 / 銅 / 亜鉛 / 小胞体ストレス / オートファジー / TFEB |
Outline of Annual Research Achievements |
亜鉛は生体組織内に広く分布し、多くの金属酵素の構成成分として存在し様々な生理機能に密接に関与している。C型肝硬変・肝癌・アルコール性肝障害の患 者では血清亜鉛濃度が著明に低値を呈することが知られており、亜鉛の投与で血清アンモニア値の有意な低下や、肝線維化予防、肝発癌予防が報告されている。 当教室ではこれまで、先天性銅代謝異常症であるWilson病患者の診療に従事しており、以前より亜鉛の肝細胞保護作用について検討を行っており、亜鉛投与が 過剰な銅による酸化ストレスや小胞体ストレス、細胞死を改善することを報告している。Wilson病では脂肪肝を合併することがあり、また近年、非アルコール性 脂肪性肝炎からの発癌も増加しており、脂肪性肝炎に対する治療対策は喫緊の課題である。 我々はこれまでに、肝培養細胞を用いて、蛋白分解系の一つであるオートファジーに着目し検討を行ってきた。過剰な銅や飽和脂肪酸がオートファジーの後期 段階を障害し、また亜鉛投与に小胞体ストレスや酸化ストレスの軽減と共にオートファジー障害が改善することを報告した。また、飽和脂肪酸の負荷により小胞 体内のカルシウム濃度が低下するが、飽和脂肪酸に不飽和脂肪酸を負荷することで小胞体内のカルシウム濃度は増加し、小胞体ストレスやオートファジー障害が 改善することも報告した。 現在、オートファジー障害の機序として、オートファジーやリソソーム生合成を転写レベルで制御するマスターレギュレーターである転写因子 TFEB(Transcription factor EB)に着目し検討を行っている。TFEBはmTORC1やカルシニューリンの作用により核内移行することが知られており、過剰な銅や飽和脂肪酸によるTFEBの作用について現在研究を進めている。各種細胞ストレスを負荷することでのTFEBの作用についても検討中である。また、亜鉛の細胞保護作用に関するTFEBの作用についても検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝培養細胞を用いて、過剰な銅及び飽和脂肪酸が与えるTFEBの作用機序に着目し現在検討中である。特に、小胞体ストレスやオートファジー障害によるTFEBの役割について検討を行なっている。肝培養細胞におい て、過剰な銅や飽和脂肪酸によるTFEBの動態については検討できており、TFEBの核内移行に関与する病態や機序について現在検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
小胞体ストレスやオートファジー障害によりTFEBの作用を調整し、過剰な銅や飽和脂肪酸とTFEBとの関連を検討する。また、過剰な銅や飽和脂肪酸に対する亜鉛の細胞保護作用におけるTFEBの働きについても検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実験で使用する試薬について、研究の進歩状況により未使用額が発生したため、翌年度分として請求した助成金と合わせて、必要な試薬を購入し検討を行う予 定である。主には、Western blotや免疫染色で使用する1次抗体や2次抗体であり、脂肪酸や各種TFEB調整薬を購入予定である。
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