2022 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞不均一性に着目した慢性肝疾患の病態進行と発がん機構の解明
Project/Area Number |
20K17038
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
山添 太士 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 肝炎・免疫研究センター, 肝疾患研究部 上級研究員 (20736219)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞核画像解析 / 慢性肝疾患 / 空間的遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、肝細胞のヘテロ不均一性(heterogeneity)に着目した新規解析法を用いて、肝細胞癌患者の切除肝標本の非癌部ならびに癌部を解析し、染色体量(ploidy)の変化と慢性肝障害の進行や発癌との関連を解明することで、その病態進行の機序を明らかにすることを目的とする。具体的には、肝細胞癌患者由来の肝癌切除標本の癌部/非癌部と転移性肝癌切除標本の非癌部の病理所見(壊死、免疫細胞浸潤など)におけるheterogeneityをzonationとploidyの両面で解析する。 これまで、転移性肝癌切除標本の非癌部を慢性肝障害のないコントロール群としてploidyとzonationの関連性の評価のために、非アルコール性脂肪性肝疾患の非癌部を5例、直腸癌の転移性肝がんの非癌部を5例解析した。2年目はさらに空間的遺伝子解析としてVISIUMを利用し、新たに4例の非アルコール性脂肪性肝疾患 の非癌部の新鮮凍結切片を用いて行った。ヒト由来手術標本の新鮮凍結切片を用いたが、遺伝子品質にばらつきが大きいことがわかった。このため遺伝子品質の良いものから順に解析した。通常のt-SNE解析に加えて、組織切片上で門脈域の線維化をランドマークとして遺伝子解析スポットの各距離を変数としてclusteringを行なったが特徴的な遺伝子群は見出せなかった。3年目は、パラフィン標本を用いたVISIUMも上市されたため、これらを用いた解析を10例行なった。現在解析中であるが、凍結切片を用いたVISIUMにくらべてサンプル品質に堅牢なシステムである可能性があった。また、シングルセル解析を慢性肝疾患モデルマウスの肝組織を用いてサンプル調製法をいくつか試行し、今後、慢性障害肝細胞およびヒト由来細胞で細胞調製法を確立し、シングルセル解析も行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで患者標本を使用した慢性肝疾患横断的なheterogeneityのランドスケープの作成に関して、解析法の最適化した。具体的には、凍結標本の厚切り切片を作成し核染色(DAPI)、細胞膜染色(Phalloidin)、肝細胞マーカー(HNF4α)免疫染色を行い、組織透明化した後、共焦点顕微鏡にて3次元構築し、肝細胞の染色体量や解剖学的位置(門脈と中心静脈との距離)を測定する方法にて慢性肝障害モデルマウスの解析とともに、パラフィン標本を用いた方法により転移性肝癌切除標本をコントロールとし、非アルコール性脂肪性肝疾患患者の非癌部をそれぞれ5例ずつ解析できた。解析に際し、ImageJを用いた、門脈域並びに中心静脈域をランドマークとして、各細胞の空間的位置を座標化して解析する方法を確立し、これをVISIUMにも応用できた。今回、ヒト由来手術標本の新鮮凍結切片を用いたが、遺伝子品質にばらつきが大きい点と各遺伝子解析領域が細胞よりも大きいというVISIUM特有の解像度の問題があり、改善点が明確化された。代替法としパラフィンサンプルを用いたVISIUMを10例施行した。解析途中ではあるものの遺伝子品質に左右されにくい堅牢なシステムである可能性が示唆された。次年度は解析を継続するとともにシングルセル解析と画像解析を融合させた解析を行う予定とし、当初の目標と同等の進捗状況にあると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
患者標本を使用した慢性肝疾患横断的なheterogeneityのランドスケープの作成に関して、非アルコール性脂肪性肝疾患患者の非癌部をそれぞれ5例ずつ解析した。解析方法が確立したため、今後B型及びC型慢性肝炎やアルコール性肝障害などの他の疾患群においても同様の評価方法を用いて解析を蓄積していく予定である。また、慢性肝障害マウスにおいても、臨床標本と同様の方法で検討し、動物種間の差および障害モデル間の差を明らかにする。シングルセル解析を用いた関連する分子機構の解明に関して、細胞あたりの染色体量の測定法を確立した。今後は種々のモデルマウスでの測定に問題がないかを事前検討する。核数は現状測定できていないため、核数を測定する方法は引き続き検討課題である。シングルセル解析は10x社の解析法を施行予定とし、すでに数回実験施行に関して事前ミーティングを10x社と行った。今後、条件検討を施行し、シングルセル解析を行う予定としている。解析方法としてはRソフトによるSeuratパッケージを用いる予定であり、NCBIデータベースから肝細胞由来のデータのsraファイルを用いた解析パイプラインの予備検討も開始している。しかしながら、施設内のパーソナルコンピュータによる解析スピードはCPUおよび搭載メモリに依存しているため、共同研究者とのアドバイスを受けながら、解析面での協力をうけている。空間的遺伝子解析に関しても、同様のプラットフォームが利用可能であり、凍結切片を用いたVISIUMならびにFFPE切片を用いたVISIUMを施行しえた。シングルセル解析ならびに空間的遺伝子解析を融合した解析を行い、本研究の目的である染色体量(ploidy)の変化と慢性肝障害の進行や発癌との関連を解明する。
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Research Products
(5 results)