2022 Fiscal Year Research-status Report
細菌叢の正常化と疾患治療を目的としたバクテリオファージ療法の開発
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20K17060
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
佐藤 祐介 麻布大学, 獣医学部, 講師 (20757265)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / クローン病 / 炎症性腸疾患 / 合成生物学 / 細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
クローン病 (CD) は炎症性腸疾患の一つであり、消化管の慢性的な炎症を特徴とする難病である。国内では、本疾病の患者数は難病の中でも特に多いにも関わらず、未だ根本的な治療法 が存在しないことが患者の大きな負担となっている。CDの発生には腸管細菌叢との関連が言われ、健常者と比較し患者の細菌叢は破綻 (Dysbiosis) を起こしていることが報告されている。そして近年の研究で、そのDysbiosisにはAIECと呼ばれる大腸菌のグループの関与が示唆されている。この研究では、細菌のウイルスであるバクテリオファージ (ファージ)、特に合成ファージを用いてAIEC除去によるDysbiosisの正常化と治療効果を検証する。 本年度は合成ファージに関する研究を実施した。1.ファージ合成。昨年度成功したファージ合成技術、特に人工ゲノム合成についての精度向上を試みた。具体的には長鎖ゲノムの効率的な連結方法の検討で、細胞株の選別により大規模なスクリーニングを必要とせずに目的の人工ゲノムを有するクローンの選択が可能となった。2. 長鎖ゲノムの抽出方法。ファージを再起動するためには傷のない長鎖のゲノムが必要である。これまでは既存のキットを使用し傷があっても大量に収集することで対応していたが、これをマニュアルでの抽出方法により少量でも質を高いものにすることに変更した。これにより効率的な再起動を実現した。3. 簡便な遺伝子改変ファージ素材の構築。これまでに確立してきたファージの改変方法は本来の宿主以外の細胞を使った改変方法であり、時間を要する。そこで、ファージに機能的な配列を導入することでより簡便な改変を可能にするモジュールの開発を行った。具体的にはファージのゲノム中にloxPなどを導入することで宿主細胞内で該当部位に任意の遺伝子を簡便に出し入れできるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この期間では実験の仕上げとして動物実験を多く行う予定であった。しかし、研究者に所属機関の異動あったこと、そして異動に伴う疾患モデルマウスの移動および飼養の制限が新型感染症に伴い存在したことにより行えなかった。2022年度末に新しい環境への動物の移動と飼育を開始できたため、翌年度に実験を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度行えなかった動物実験を中心に行う。具体的には野生型ファージと合成ファージを用いた比較と解析を中心に進める予定で、状況に応じて合成ファージのブラッシュアップも進める予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度実施予定だった動物実験および関連する研究が行えなかったため。翌年度実施するために次年度使用とした。
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[Presentation] 塩川 麗良, 岡本 憲明, 渡邉 健司, 水上 洋一, 永根 大幹, 山内 章寛, 金井 詠一, 高木 哲, 山下 匡, 佐藤 祐介, 川本 恵子, 岡本 まり子2022