2020 Fiscal Year Research-status Report
インジゴ化合物による新規原発性硬化性胆管炎治療法の開発
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20K17062
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷木 信仁 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (20627129)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原発性硬化性胆管炎 / 青黛 / AhR |
Outline of Annual Research Achievements |
原発性硬化性胆管炎(PSC, Primary Sclerosing Cholangilitis)には有効な治療法がなく、新規治療の開発が急務である。PSC 患者は潰瘍性大腸炎(UC, Ulcerative Colitis)をしばしば合併し、PSC の病態形成に深く関わるとされる。今我々はUC に対して有効性が示されているhydrocarbon receptor (AhR)リガンドとして作用するインジゴ化合物を含む生薬である青黛に関して、PSC の新たな治療法としての可能性に着目した。 今回、先行研究で構築されたUC 患者に対する青黛の有効性を検討した多施設データベースを解析し、PSC/UC 合併患者において青黛服用によりPSC 病勢が改善した症例が存在することがわかった。 予備検討において、PSC モデルマウスである3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine(DDC)による薬剤誘発性胆管炎マウス、胆汁うっ滞性胆管炎を呈するMDR2 ノックアウトマウスにおいて、青黛投与により胆管障害が著明に軽減することを見出していた。また、肝臓内免疫細胞の変化を解析し、青黛およびAhR リガンド投与により硬化性胆管炎に特徴的であるIL-1b 産生性単球・TH17 細胞・IFN-g 産生性gδ 陽性T 細胞の浸潤が抑制されることを見出した。さらに、腸炎モデルマウスにおける青黛の効果はIL22 産生性ILC3 細胞および制御性T 細胞(Treg)などが関与すると報告されているが、硬化性胆管炎モデルにおける青黛の胆管障害抑制効果はILC3 の欠如するRORgT KO マウスやTreg 細胞の欠如するRAG2 KO マウスにおいても同様に誘導され、腸炎モデルで知られるような従来の炎症抑制機序とは異なった病態制御機構の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の検討結果では、肝臓内免疫細胞の変化を解析し、青黛およびAhR リガンド投与により硬化性胆管炎に特徴的であるIL-1b 産生性単球・TH17 細胞・IFN-g 産生性gδ 陽性T 細胞の浸潤が抑制されることを見出した。さらに、腸炎モデルマウスにおける青黛の効果はIL22 産生性ILC3 細胞および制御性T 細胞(Treg)などが関与すると報告されているが、硬化性胆管炎モデルにおける青黛の胆管障害抑制効果はILC3 の欠如するRORgT KO マウスやTreg 細胞の欠如するRAG2 KO マウスにおいても同様に誘導され、腸炎モデルで知られるような従来の炎症抑制機序とは異なった病態制御機構の存在が示唆された。当初の計画どおり、他の解析も進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
[1] AhR KOマウスおよびAhRの各種コンディショナルKOマウスを使用した検討:AhR KOマウスを用い、青黛の胆管障害改善効果がAhR依存的であるかを検証する。さらに、腸管上皮、大腸上皮、肝臓、胆管上皮、T細胞、樹状細胞、それぞれのCreを発現するマウスとAhRfloxマウスを交配させることで種々のAhRコンディショナルKOを作成し検討、青黛の胆管障害抑制効果に関わる責任細胞の同定を目指す。 [2] メタゲノム腸内細菌叢解析およびインジゴ関連代謝物のオミックス解析:青黛投与によって生体内で増加する治癒因子(腸内細菌や代謝物)を、メタゲノム解析・メタボローム解析・in vivo硬化性胆管炎モデルマウスを用いて探索する。この解析で大きく変化した腸内細菌および増加した因子・代謝物などを特定し、有望な因子についてPSCモデルマウスを用いて胆管障害抑制効果を検証する。特定された腸内細菌については、AhRリガンドの代謝能を評価し、バイオマーカーとなりうる因子の検索、個別化医療への応用を目指す。 [3] ヒトAhRノックインマウスを用いた検討:ヒトのAhRはマウスやラットのAhRと比較して、種々のAhRリガンドに対するに親和性が異なる。遺伝子工学的にヒトのAhR遺伝子を挿入したマウスを用いて、青黛の効果がヒトにおいても有効であるか検証することで、本研究を臨床応用につなげるための基盤的研究とする。 [4]ヒト検体におけるメタゲノム腸内細菌叢解析およびインジゴ関連代謝物のオミックス解析:PSC/UC合併患者、さらに青黛を服用した既往のある症例を抽出し、これらの患者群から同意を新たに取得できた場合、糞便および血清などの臨床検体の提供を受け、糞便の腸内細菌叢の16S-rRNAの系統的シーケンスをおよび血清におけるインジゴ関連代謝物をオミックス解析で評価する。
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[Journal Article] The liver-brain-gut neural arc maintains the Treg cell niche in the gut2020
Author(s)
Teratani T, Mikami Y, Nakamoto N, Suzuki T, Harada Y, Okabayashi K, Hagihara Y, Taniki N, Kohno K, Shibata S, Miyamoto K, Ishigame H, Chu PS, Sujino T, Suda W, Hattori M, Matsui M, Okada T, Okano H, Inoue M, Yada T, Kitagawa Y, Yoshimura A, Tanida M, Tsuda M, Iwasaki Y, Kanai T
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Journal Title
Nature
Volume: 585
Pages: 591~596
DOI
Peer Reviewed