2020 Fiscal Year Research-status Report
低酸素曝露動物モデルにおいてT型Caチャネル阻害剤に胎児遺伝子抑制作用はあるか
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20K17089
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
佐々木 誠 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (90710963)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | T型カルシウムチャネル阻害剤 / 低酸素 / 胎児遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
成体を低酸素環境におくと, 胎児遺伝子の再活性化によりT型カルシウムチャネルが再発現し, 心筋のリモデリングや不整脈の原因となる. また, 副腎ではカテコラミンの分泌が亢進する. 本研究では, T型カルシウムチャネル阻害剤が副腎からのカテコラミンの分泌を抑制し, 心臓のリモデリングや不整脈を予防することを示す. 2020年度に低酸素チャンバーを導入し, 研究を行う設備を整備した. また, 培養する心筋細胞の選定であるが, 生体から採取した心筋細胞は長期間培養することができないため, 長期間の培養に適した心筋細胞の選定を行った. 長期間の培養に耐える心筋細胞として, iPS細胞から分化させた心筋細胞を使用することとした. 低酸素環境下で細胞培養を行う予定であったが, 使用予定であったT型カルシウムチャネル阻害剤(NNC55-0396)に横紋筋のアポトーシスと筋萎縮を誘発する作用があることをLi(Cell Death and Disease 2020)らが報告した. そのため, 研究を一時中断することとした. 今後, 投与経路を変更し, 特定の臓器にのみ作用させる方法を検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上記の通り, NNC55-0396が横紋筋のアポトーシスと萎縮を誘発することが報告されたため, 研究を一時中断している. 今回, NNC55-0396を選定した理由は, NNC55-0396とスタチン系薬剤の代謝が異なる代謝酵素で行われるためである. 1998年にスタチン系薬剤との併用で同様の合併症が報告され市場から撤退したT型カルシウムチャネル阻害剤Mibefradilとは, この点が異なる. 今回のLiら報告で判明したことは, 横紋筋への副作用がスタチン系薬剤によるものではなく, T型カルシウムチャネル阻害剤によるものであったことである. 心不全や不整脈の治療を目的としたT型カルシウムチャネル阻害剤の全身投与は, 臨床応用が難しい可能性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
NNC55-0396の全身投与により横紋筋が障害されることがわかったため, 投与経路の変更を考えている. 変更方法としては, 特定の臓器にのみ作用するような投与方法を検討している. また, NNC55-0396によるアポトーシス誘発作用の機序を詳細に検討することにより, 心不全や不整脈に特異的で副作用の小さい薬剤の選定が可能になると考えている.
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Causes of Carryover |
先述したように研究を一時中断し, 試料を購入していないため, 請求金額と助成金の間に差額が生じている.
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