2021 Fiscal Year Research-status Report
拡張型心筋症におけるmicroRNAの組織所見・臨床経過に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
20K17091
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
柴田 敦 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (60722668)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コホート研究 / 心筋組織凍結保存 / 筋肉内脂肪割合 / 心臓周囲脂肪 / マイオカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、特定疾患の一つである拡張型心筋症の病態の解明を目指すべく、“環境要因・後天性要因によるmicroRNA (miRNA)の発現の変化が、拡張型心筋症患者の心筋リモデリングやミトコンドリア異常に関与する” という仮説を立て拡張型心筋症患者のmiRNAの変化と組織所見、臨床アウトカムとの関連を解析することを計画した。 まず令和2年度に、非虚血性心筋症心筋生検症例のコホート研究を実施し、心筋組織所見を含めたベースラインデータを整備した。令和3年度はこのコホート研究を継続するとともに、臨床アウトカムの評価ならびに、臨床アウトカムに影響を及ぼす因子の検討を行った。 このコホート研究では画像による体組成の評価、血液サンプルの凍結保存、心筋生検時の心筋残余組織の凍結保存も含んでいる。このコホート研究から、大腿部の筋肉内脂肪割合と心不全イベントとの関連(Am J Cardiol. 2022)、心臓周囲脂肪と左室の逆リモデリングとの関連(Int J Cardiol. 2022)を見出した。また、大腿部の筋肉内脂肪割合を筋肉の構造的な質として捉えたときに、筋肉の分泌器官としての質の重要性も考慮された。そこで凍結血液サンプルから、筋肉線維で生成され、放出されるペプタイドで分泌効果を発揮するものとされる各種マイオカインの測定を行った。結果、マイオカインの一つであり心保護効果が期待されているBDNFと筋肉内脂肪割合を組み合わせることで、非虚血性心筋症患者のイベント発生予測能が向上することを見出した(2022年日本循環器学会発表)。 これらの結果より、非虚血性心筋症の病態に異所性脂肪が関与している可能性を考慮し、異所性脂肪と心筋組織性状の関連性の検討を行っている。また、異所性脂肪が心筋組織におけるmiRNAの発現に変化をもたらす後天性要因の一つではないかと考えており、更なる研究の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、令和2-3年度の課題として、非虚血性心筋症心筋生検症例のコホート研究を実施し、心筋組織所見を含めたベースラインデータを整備することを掲げた。こちらに関しては、計画通り進めることが出来ており、本コホート研究から一定の成果も報告することが出来ている。 また、令和2-4年度の課題として、血液・心筋生検サンプルを用いたmiRNA解析と組織所見との関連検討を掲げた。上記コホート研究に登録された、非虚血性心筋症患者の凍結心筋組織からのRNAの抽出に関しては、予備実験として拡張型心筋症患者以外で行っており、問題なく抽出することが出来、発現プロファイルを評価することが出来ることを確認した。これにより、令和4年度に上記コホート研究内の拡張型心筋症患者を抽出しmiRNAの抽出・解析を行う算段を立てることが出来ており、おおむね順調に計画を進めることが出来ている。 一方で、COVID-19の感染拡大を受け、当初、海外学会で発表を行うことで、海外の研究者と意見交換の場を得ることを考えていたが、海外渡航制限の影響により計画を実行することが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績に報告した通り、非虚血性心筋症の病態に異所性脂肪が関与している可能性を考慮し、異所性脂肪と心筋組織性状の関連性の検討を行っている。また、異所性脂肪が心筋組織におけるmiRNAの発現に変化をもたらす後天性要因の一つではないかと考えており、更なる研究の準備を進めている。 具体的には非虚血性心筋症のコホート研究から最終診断が拡張型心筋症であった患者を抽出し、6か月後の評価で心機能改善が得られた症例と得られなかった症例に分け、傾向スコアマッチの手法を用いてこの2群の患者背景を揃える。その上で、心筋組織からmiRNAを抽出し、発現プロファイルを検討することで心機能改善に関与する可能性の高いmiRNAをリストアップする。このmiRNA解析結果と心筋組織所見の関連を検討する。更に、このmiRNAと異所性脂肪の解析結果との関連を評価する。これにより心臓周囲脂肪が心筋におけるmiRNAの発現に変化をもたらす後天性要因の候補となりうるか検証する。 また、当初の方針通り、血液サンプルを用いたmiRNA解析にも着手する。患者血清よりエクソソーム画分を抽出・精製し、エクソソームに含まれるmiRNAを、キットを用いて抽出する。このmiRNAの発現を、先の心筋組織から得られたmiRNAの結果と照らし合わせて検証することで、血中のmiRNAが拡張型心筋症患者の臨床的バイオマーカーとなりうるか検討する。
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Causes of Carryover |
当初、海外学会で発表を行うことで、海外の研究者と意見交換の場を得ることを考えていたが、海外渡航制限の影響により計画を実行することが出来なかった。そのため、学会参加費用を見込んでいたが、使用しなかったため繰越金が多く生じた。 次年度研究計画の中でも、miRNAの抽出、解析には多くの費用が必要であることが予想されるが、本年度からの繰越金を合わせることで、より多くの症例で解析が出来ることが見込まれる。
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[Presentation] 心臓周囲脂肪は非虚血性心筋症患者における左室収縮能改善の予測因子である2021
Author(s)
山口祐美, 柴田敦, 吉田俊丈, 谷畑慧子, 林浩也, 市川佳誉, 石川裕敏, 北田諒子, 江原省一, 泉家康宏, 葭山稔
Organizer
第7回日本心筋症研究会
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[Presentation] 心肺運動負荷試験を用いた心アミロイドーシスにおける運動時生体反応の検討2021
Author(s)
山口祐美, 柴田敦, 吉田俊丈, 谷畑慧子, 林浩也, 市川佳誉, 石川裕敏, 北田諒子, 江原省一, 泉家康宏, 葭山稔
Organizer
第27回日本心臓リハビリテーション学会
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