2020 Fiscal Year Research-status Report
CCR2特異的新規PETトレーサーを用いた動脈硬化の病態解明およびその臨床応用
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20K17115
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
馬場 理 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (30758446)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / ケモカイン受容体 / CCR2 / PET |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化性疾患において、不安定プラークの同定を可能とする診断方法、および動脈硬化巣における分子動態を非侵襲的に評価する方法の開発が求められているが、PET検査は潜在的にそれらを可能とする。ケモカイン受容体の一つであるCCR2は主に白血球表面に発現しており、動脈硬化進展において重要な役割を果たしていることが判明している。これらを鑑みて、我々のグループではCCR2に特異的に結合するPETトレーサー(64Cu-DOTA-ECL1i)を開発した。また、我々は、このトレーサーがマウスにおける動脈硬化巣に集積することを明らかにしている。本研究においては、このトレーサーの動脈硬化巣におけるPETシグナルの病的意義、および標的細胞を明らかにすることを目的としている。これまでに、(1) マウス動脈硬化退縮モデルにおいてCCR2特異的PETトレーサーシグナルを解析したところ、動脈硬化巣のサイズやマクロファージ含有量より単球の取り込み量に相関すること。(2) 動脈硬化巣中のCCR2細胞を免疫染色にて解析したところ、CCR2陽性細胞は比較的サイズが小さく、脂質含有量の少ない非泡沫細胞であること、が判明していた。今回、それらに加えて、(1) 動脈硬化巣におけるCCR2陽性細胞は主に非泡沫性炎症性マクロファージであること、(2) 蛍光色素にて標識したCCR2特異的トレーサー(CF640R-ECL1i)を用いて、その体内での分布を解析したところ、末梢血では炎症性単球に主に結合すること、動脈硬化巣では単球およびCCR2陽性マクロファージと結合することが判明した。マウス動脈硬化退縮モデルにて大動脈中のCCR2陽性白血球分画について解析したところ、単球およびCCR2陽性マクロファージ含有量の有意な低下が認められ、これが動脈硬化退縮モデルにおけるPETシグナルの低下の原因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、当該年度の計画として予定されていた、動脈硬化巣中のCCR2陽性白血球のフローサイトメトリーによる解析については、ほぼ予定通りに施行することができた。結果、その主な分画はCD11c陰性CD206陰性、そしてBODIPY陰性の非泡沫性の炎症性マクロファージであることが示唆された。動脈硬化巣中のCCR2陽性およびCCR2陰性のマクロファージにおける炎症性ケモカインであるMCP1の発現をフローサイトメトリーで確認したところ、CCR2陽性マクロファージにおいて有意に発現量が増加していることが示され、CCR2陽性マクロファージが炎症性であることが確認された。ただし、一部のリンパ球がCCR2を発現していることも判明したために、こちらについてもさらに解析を進める予定である。 また、蛍光標識されたCCR2特異的トレーサーを用いた、生体内でのトレーサーの分布解析についても解析が終了。フローサイトメトリー解析によって、末梢血ではCCR2を高発現する炎症性単球に主に結合し、動脈硬化巣中では、炎症性単球および炎症性であるCCR2陽性マクロファージと結合することが判明した。ただし、動脈硬化巣における免疫染色は蛍光標識トレーサーの非特異的結合が多く解析が困難であった。 さらに、2年目に予定されていた動脈硬化退縮モデルにおけるCCR2陽性白血球分画の推移についても解析を行っており、単球およびCCR2陽性マクロファージ含有量の有意な低下が認められ、これが動脈硬化退縮モデルにおけるPETシグナルの低下の原因であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、早期プラークモデルを用いたCCR2特異的PETトレーサーの動脈硬化発症予測能の評価を行う。これまでにCCR2特異的PETシグナルは動脈硬化巣への単球の取り込みと相関があることがわかっている。動脈硬化プラークの発生に単球の取り込みが重要であることより、動脈硬化発生極早期、もしくは発生前にすでにPETシグナルが増強している可能性を考えている。LDL受容体欠損マウスを用いた早期プラークモデルにおいて、動脈硬化プラーク発生初期、またそれ以前にCCR2特異的PETシグナルが、動脈硬化の易発生部位である大動脈弓にて上昇しているかどうかを経時的に確認する。 また、動脈硬化巣中の主なCCR2陽性細胞は非泡沫性炎症性マクロファージであることが判明したが、この細胞群の由来については判明していない。動脈硬化巣中のマクロファージは、元々動脈壁に存在する在来性のマクロファージ由来のものと、末梢血中の単球が動脈硬化巣に取り込まれ、分化したものの2つの可能性が考えられる。これを確認するために、蛍光タンパクを発現する末梢血中の単球をアポE欠損マウスに静注し、経時的に蛍光タンパクを発現するマクロファージ分画をフローサイトメトリーによって解析する。また、逆に、末梢血中の炎症性単球を抗体によって除去して、動脈硬化巣中のどのマクロファージ分画が減少していくかを経時的に確認する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究が、事前予測より円滑に進んだために使用額が小さくなった。 しかしながら、事前に予定されていたものとは別の追加実験(動脈硬化巣中のマクロファージの由来についての解析)の必要性が生じたために、これについて繰越金を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)