2020 Fiscal Year Research-status Report
働き世代の隠れたリスク-職場高血圧、昼間高血圧に関する検討
Project/Area Number |
20K17127
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
冨谷 奈穂子 自治医科大学, 医学部, リサーチ・レジデント (50867083)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 職場高血圧 / ストレス高血圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 「職場高血圧」の特徴やリスク 本年度は、家庭血圧に加え職場血圧を同一血圧計(Medinote:オムロンヘルスケア株式会社)で測定したデータ(J-HOP: worksite)を用いて、未治療高血圧者、高値血圧、正常高値血圧および正常血圧者の家庭および職場の血圧・血圧変動の特徴を明らかにした。早朝の血圧上昇が心血管イベントの強力なリスク因子となることは、これまでいくつもの研究で明らかにされているが、本研究においては、高血圧診断閾値(140/90 mmHg)未満の高値血圧および正常血圧者では、早朝家庭血圧よりも職場血圧の方が有意に上昇していた。高血圧患者においては、早朝血圧と職場血圧は同程度であった。また、職場血圧は臓器障害の指標である左室心筋重量係数(心エコーで測定)と相関しており、職場血圧の上昇は心血管リスクを増大させることも明らかになった (J Clin Hypertens. 2021 Jan;23:53-60.)。これらのことから、職場血圧はプレ高血圧患者にとって高血圧発症の早期検出指標となり得る。 2) ストレスによる血圧上昇 腕時計型ウェアラブル血圧計(HeartGuide:オムロンヘルスケア株式会社製)を用いて日中に自己測定した血圧と血圧測定時の状況・感情等について記録してもらった情報を合わせて解析し、昼間血圧上昇の要因を検討した。その結果、収縮期血圧はNegativeな感情時には7.9 mmHg上昇し、職場では家庭での測定に比較して4.6 mmHg上昇していた(Am J Hypertens. 2021:20;34(4):377-382.)。これらは独立して血圧上昇要因となっていたため、職場でNegativeな感情下で測定した場合には12.5 mmHgの上昇が推計される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R2年度中に、職場血圧のリスクを成果としてまとめた(J Clin Hypertens. 2021 Jan;23:53-60.)。また、職場やストレス環境下での血圧について、別の集団・別のデバイスを用いた研究データで検証し、職場で血圧が上昇することを示した(Am J Hypertens. 2021:20;34(4):377-382.)。残りの研究期間では、J-HOPworksite研究のフォローアップデータから、職場高血圧の経年変化や予後についての検討を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) 「正常高値血圧」「高値血圧」の職場血圧リスク評価 今年度の研究で、「正常高値血圧」「高値血圧」では、朝の家庭血圧よりも職場血圧の方が高値であることを示した。職場血圧のみが高値であることは、将来のリスクにつながるのか、フォローアップデータを用いて検討を進める。
2) ハイリスク患者の「昼間高血圧」 ハイリスク患者を登録したJ-HOP研究のうち、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)を実施した約1500名を対象に、ABPMで測定した昼間血圧についての検討を行う。
|
Causes of Carryover |
2020年度は、出席を予定していた高血圧学会が延期となり、予定していた旅費の支出がなくなったため、次年度使用額が生じた。次年度の学会への現地参加については不透明であるが、現時点で高血圧学会は発表者は現地での発表を予定しているため、その旅費を次年度使用額で賄う。
|