2020 Fiscal Year Research-status Report
不全心におけるナトリウム利尿ペプチドの転写制御機構の解明
Project/Area Number |
20K17151
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松岡 研 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90826190)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CR9 / エンハンサー / 心不全 / ナトリウム利尿ペプチド / 遺伝子治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナトリウム利尿ペプチド(ANP/BNP)両遺伝子はゲノム上隣接して存在し、その遺伝子産物は血管拡張・利尿作用を持つペプチド性ホルモンであり、心不全重症度指標・心不全治療薬として臨床で頻用されている。我々は不全心でANP/BNPの発現が誘導される機序を解明するため、先行研究にてANP/BNP遺伝子を誘導する650塩基からなる心不全感受性エンハンサー領域(CR9)を同定した(2014 FASEB J 松岡)。その後の研究でCR9領域のノックアウトマウスでは心臓でのANP/BNP両遺伝子の発現がほぼ消失したことから、CR9は心不全を感知して遺伝子発現を誘導するエンハンサーであるという新知見を得た。更にCR9ノックアウトマウスの心不全モデルでは心不全増悪を認め、CR9による遺伝子発現制御は心不全発症予防に必須であることも示唆された。CR9による転写制御機構やヒト不全心におけるCR9の機能は未だに不明であり、本研究においてCR9転写制御機構の更なる解明を行い、遺伝子治療応用への可能性を探ることを目的とした。 当該年度では、CR9転写制御機構の解明のためにCR9ノックアウトマウスのクロマチン修飾解析を行うためにChIL-Seqを試みた。転写活性化クロマチン修飾の指標であるH3K4me3のChIL-Seqは成功し、次年度でH3K27acやH3K27me3など他のクロマチン修飾解析も試みる予定である。またヒトにおけるCR9の機能を検討するために、CR9をノックアウトしたヒトiPS由来心筋細胞を現在作製中であり、次年度にANP/BNP遺伝子発現などの機能解析を行う予定である。遺伝子治療応用については、ルシフェラーゼレポーター遺伝子上流にCR9を組み込んだAAVベクターを作製し、マウスで発現確認するために現在大量精製中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞と異なり成マウス心臓のクロマチン修飾解析は難しいが、様々な条件検討を行うことにより乗り越えられつつある。またCR9領域をノックアウトしたヒトiPS由来心筋細胞の作製やルシフェラーゼレポーター遺伝子上流にCR9を組み込んだAAVベクターを作製も順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
CR9ノックアウトマウスのクロマチン修飾解析については、H3K4me3の解析は成功しており、次年度でH3K27acやH3K27me3など他のクロマチン修飾解析も試みる予定である。またヒトにおけるCR9の機能を検討については、CR9をノックアウトしたヒトiPS由来心筋細胞が完成すれば、次年度にANP/BNP遺伝子発現などの機能解析を行う予定である。遺伝子治療応用については、ルシフェラーゼレポーター遺伝子上流にCR9を組み込んだAAVベクターの大量精製が終われば、マウスに投与し発光ライブイメージングを行うことにより、心臓特異性と心不全応答性を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
クロマチン修飾解析において、使用動物が少なく済んだこと、試薬を共同研究先から譲渡して頂けたことから、予定よりも費用を抑えることができたため。この分の費用は、遺伝子治療用のAAVウイルス大量精製に使用する予定である。
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