2021 Fiscal Year Research-status Report
乳がん化学療法による心毒性のメカニズムの解明とリスク患者の層別化
Project/Area Number |
20K17159
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
北田 諒子 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (70735050)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腫瘍循環器学 / 薬剤性心筋症 / 乳がん / トラスツズマブ |
Outline of Annual Research Achievements |
日本人の約3人に1人が悪性新生物でなくなっている。がんの罹患率が増加する一方で治療法の進歩で寛解率や治癒率も上昇している。乳がんも同様でそれに伴い、アントラサイクリン系の薬剤や分子標的薬、特に特にHER2阻害薬であるトラスツマブ(TRZ)による薬剤誘発性心筋症も多く経験されるようになった。TRZの代表的な副作用の一つに左室収縮能低下による心不全があり、20人に1人程度の頻度で発症する。薬剤性心筋症は時に致死的となるため発症予測、治療法の確立は急務である。 TRZによる心筋症の発症機序としては、心筋細胞障害と血管内皮細胞障害の2つが考えられている。HER2タンパク質が心筋の恒常性維持に重要であることは、動物実験により解明されている。多くは、薬剤投与を中止すると改善するが、心不全発症する患者の遺伝背景や心毒性をきたす分子機序は不明である。 本研究では、乳がん患者から採取した血球からiPS細胞を樹立し、心筋細胞に分化させることで、患者の遺伝背景をもつ心筋細胞プラットフォームを作成する。心筋細胞は他の臓器と違い、患者特性を持った細胞自体をたくさん取得することが困難である。本研究では、作成した心筋細胞プラットフォームを使用し、TRZ添加後の細胞応答を心不全症例と非心不全症例で比較検討する。 本研究により、TRZによる乳がん化学療法による心毒性メカニズムを解明し、心毒性を生じるリスクの高い患者を層別化し、最終的には治療法の確立につなげていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き、トラスツマブとドキソルビシンで心機能低下、心不全を発症した対象症例からiPS細胞を樹立した。本年度は、患者より樹立したiPS細胞を心筋細胞へ分化させて、薬剤負荷を施行し、比較検討を行っている段階である。心筋細胞の分化の程度や、薬剤負荷の濃度についても検討を行う必要があり、進歩状況が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き、患者より樹立したiPS細胞を心筋細胞へ分化させて、薬剤負荷を施行し、比較検討を行っている段階である。症例数を増やすことと、今後、化学療法を行っていく患者についての評価について取り組んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
心筋細胞のプロテオミクス解析を次年度に数多く施行する予定である。
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