2020 Fiscal Year Research-status Report
右心不全特異的な分子標的療法の創出に向けた基盤研究
Project/Area Number |
20K17167
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
伊藤 章吾 久留米大学, 医学部, 助教 (60647808)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 右心不全 / 補体経路 / マウス / 肺動脈結紮モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
右室の発現変動遺伝子の探索 …これまで「なぜ線維脂肪変性が右室に限局して起こるか」について基礎的に研究された報告は無い。このため、我々は「右室の発現変動遺伝子を明らかにすれば、右室上部の線維脂肪変性の原因を明らかにできる」と考え、右室の網羅的遺伝子発現解析を行ない、補体副経路が右室で活性化している事を見出した。更に免疫染色によっても同様の結果を確認できた。特に補体C3aは生理機能の強いタンパクとして知られ、神経変性疾患、認知症、がんの転移などに重要な分子として知られているが、心臓での役割は不明である。そこで、右室のC3a活性化に着目した。 ・右心不全との関連…右室で細胞傷害機能を有する補体C3aが定常状態において活性化しているが、その有無と表現系の差異を見出すことはできなかった。このため我々は肺動脈結紮術によって右心不全モデルを作成した。次に、補体経路のC3a産生に関与する各種ノックアウトマウスを用いて、肺動脈結紮術を行った。その結果、いずれのモデルにおいても有心機能は正常であった。さらに、C3aレセプターアンタゴニストを投与することで、右心不全の表現系を呈さなかった。このことから、有心不全に対してC3a経路を阻害することの有効性が示された。 ・催不整脈性との関連の解明…不整脈誘発実験は共同研究のもとで行われたため、多数の個体を処理することが不可能であり、C3KOマウスとアンタゴニスト投与マウスの肺動脈結紮モデルに対して電気生理学検査を行った。一部解析を終えており、野生型マウスではプログラム刺激で心室頻拍・心室細動が誘発されたが、C3KOマウス・アンタゴニストではいかなる刺激においても心室性不整脈は誘発されなかった。 ・ヒト保存血清を用いた血中C3タンパク定量と右心不全重症度との相関…ELISA法で行い、一部解析を終え、良好な相関がえられている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最大の進捗の遅れの原因は、新型コロナウイルス感染による基礎実験ラボの密の回避に端を発した勤務調整をしなければならなかったためである。 まず、我々の実験機関は大学医学部の附属施設で、同敷地内に医学部附属病院を有している。このため、実験室内での新型コロナウイルス感染者の発生は絶対に食い止めなければならなかった。 我々の行動変容はもちろんであるが、業務に関しても出勤調整を行わざるを得なかった。 このため、マウス飼育員の出勤停止が必要となり、実験者自身でマウスの飼育を行なったが、飼育室への立ち入りを短時間に制限されたため、新規交配を完全に停止し、維持することに努めた。このため、動物の病死が生じうる実験モデル作成も完全に停止した。これらの影響で、分子生物学的実験の進捗にも大幅な支障をきたした。現在でも、出勤調整は新型コロナウイルス感染者数の推移によって厳しく定められており、実験の進捗が滞る状況は続いている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記に示した通り、新型コロナウイルス感染による動物飼育の制限により、実際実験に使用する予定であったコンディショナルノックアウトマウスの系統維持を断念した。また、新規交配を停止した影響で、複数系統のマウスで出産が見込めなくなった。業務の複雑性と、飼育マウス個体数に制限があり、凍結胚移植も禁止されているため、現在あるモデル動物で実験を進めることとした。特に本研究においてC3a受容体ノックアウトマウスの使用は必須であると考えられるが、このマウスを用いることなく実験を進めなければならない状況となり、論文作成し、順次投稿を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行によるマウス交配の停止、マウスモデル作成の停止に端を発し、一連の実験が完全に滞ってしまった。来年度からは、遺伝子改変マウスの実験計画の変更が生じたため、細胞実験を主体に進める方針である。本実験計画書に記載された、補体タンパクの心筋細胞に対して与える影響を、培養心筋細胞に対する補体タンパク投与を行い、下流のシグナルカスケードの同定について、ウエスタンブロット解析を行なったり、イメージング実験を強化しようと考えている。 また、旅費・共同研究社謝金については、新型コロナウイルス感染証が蔓延しており、学内ルールで2020年度は遠方への移動が完全に禁止されたため、これらの費用は一切発生しなかった。これについては、感染症の流行状況を鑑みて考慮することとし、2021年度に費用発生が生じる可能性がある。
|
-
-
[Presentation] Development of molecular targeted therapy against right ventricular failure: involvement in a network of immunocompetent cells2020
Author(s)
Shogo Ito, Shinsuke Yuasa, Jin Komuro, Toshiomi Katsuki, Mai Kimura, Dai Kusumoto, Hisayuki Hashimoto, Ryohei Majima, Keiichi Fukuda, Hiroki Aoki, Yoshihiro Fukumoto.
Organizer
Basic Cardiovascular Science 2020
Int'l Joint Research
-
[Presentation] Development of molecular targeted therapy against right ventricular failure: involvement in a network of immunocompetent cells2020
Author(s)
Shogo Ito, Shinsuke Yuasa, Takahiro Nakamura, Yohei Akiba, Jin Komuro, Toshiomi Katsuki, Mai Kimura, Dai Kusumoto, Hisayuki Hashimoto, Keiichi Fukuda, Yoshihiro Fukumoto.
Organizer
AHA Scientific Sessions 2020
Int'l Joint Research