2020 Fiscal Year Research-status Report
BET阻害によるDNA損傷修復阻害効果を用いた新たな肺癌治療の開発
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20K17173
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高島 雄太 北海道大学, 大学病院, 助教 (90848764)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺がん / DNA修復 / 非相同末端結合 / 細胞周期 / BET |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、BET阻害がDNA2本鎖切断(DSB)の修復を阻害することでDNA傷害活性をもつ様々な薬剤の効果を増強することが報告されている。しかし、これらの先行研究のほとんどは細胞周期におけるS期細胞のDNAを傷害する薬剤とBET阻害剤との併用についての検討であり、その標的としているDSB修復機構は相同組換え(HR)である。BET阻害はもう一つのDSB修復機構である非相同末端結合機構(NHEJ)も抑制しうることが報告されているが、その機序やBET阻害によるNHEJ阻害能が抗癌治療に応用できるかどうかについての検討はほとんどされていない。本研究は肺癌の新たな治療法を産み出すべく、BET阻害によるNHEJ抑制を利用した治療方法の有 用性とその機序の解明を目指す。申請者らはNHEJレポータープラスミドを組み込んだ非小細胞肺癌細胞株の作成に成功し、その細胞株を用いてBET阻害がNHEJ修復活性を著明に低下させることを明らかにした。また、非小細胞肺癌細胞株にBET阻害剤を投与するとNHEJに関与する複数の遺伝子の発現が低下することも明らかにした。DSBを起こすことが知られているWEE1阻害剤とBET阻害剤を非小細胞肺癌細胞株に対して併用投与すると、それぞれの薬剤を単独投与した際と比較しても強いDSBが生じることが明らかとなり、この2剤併用療法は非小細胞肺癌細胞株に対して相乗的な抗腫瘍効果を示した。異種移植マウスモデルを用いた実験でも細胞実験と矛盾しない結果であった。これらの結果から、BET阻害剤とWEE1阻害剤の併用療法は非小細胞肺癌細胞に対する新しい治療戦略になる可能性が示唆された。今後、BET阻害が細胞周期に及ぼす影響などさらなる検証を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HRレポータープラスミドを組み込んだ非小細胞肺癌細胞株の作成にも成功し、予定通りの進捗状況と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今回作成に成功したHRレポータープラスミドを組み込んだ非小細胞肺癌細胞株と既に実験に使用しているNHEJレポータープラスミドを組み込んだ非小細胞肺癌細胞株を合わせて使用することで様々な条件下でのDSB修復活性を評価することが可能な環境を整えることができた。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染症の流行で実験が制限されてしまった期間があったことや予定していた出張が不可能となってしまったため。 研究自体は正常な状況に戻りつつあるため今後の物品購入などに使用したいと考えている。
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