2021 Fiscal Year Research-status Report
肺腺癌に対するタイト結合分子を介したヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の抗腫瘍効果
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20K17186
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
新井 航 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (30837224)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | タイトジャンクション / HDAC阻害薬 / 肺腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
Histone Deacetylase(HDAC)阻害剤はエピジェニックに作用する薬剤で、ヒストンのアセチル化を亢進し、クロマチン構造の弛緩を介して発現抑制された遺伝子の発現を促進させ、癌細胞に対して抗腫瘍効果を示すことが報告されている。我々は、従来の抗癌剤とは全く異なる作用点を持ち、タイト結合分子の調整にも関与しているHDAC阻害剤に注目したHDAC阻害薬による肺癌に対する抗腫瘍効果のメカニズムにはがん細胞の増殖、浸潤および遊走に密接な関与がみられるタイト結合分子が深く関係していることがわかった。肺腺癌細胞株A549を使用しタイト結合分子のうちlipolysis-stimulated lipoprotein receptor (LSR)およびclaudin-2に焦点を当て、HDAC阻害薬の抗腫瘍効果の解析を行った。HDAC阻害薬はLSRの発現を増加させ、claudin-2の発現を低下させることで抗腫瘍効果を示すことが確認された。LSRの発現を低下させるとclaudin-2の発現が高まりA549細胞における腫瘍増殖を亢進することが確認されたため、HDAC阻害薬の抗腫瘍作用はLSRの発現を調整することによることが分かった。また、炎症性メディエーターであるHMGB1は様々な腫瘍において腫瘍増殖作用を示すことが近年知られてきた。このHMGB1もまた、LSRやclaudin-2の発現を調整することで腫瘍増殖に関与していることが分かった。HMGB1もまた、今後の分子標的薬のターゲットとなる可能性があることが示唆された。 我々はまた、肺腺がんに対して肺葉切除を施行し患者の正常肺から正常初代培養肺細胞を分離培養することに成功した。この初代培養肺細胞に対してHDAC阻害薬を作用させLSRやclaudin-2の発現変化を解析した。これらの研究結果を英文学術雑誌に投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進行しており、本研究に関連する論文を投稿している。現在関連論文が2編共同筆者で出版されている他、筆頭筆者として1編acceptを受け出版待ちの状態にある。また、研究室において関連する研究を進行中であり、今後も英語論文による発表と学会発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はタイト結合分子と肺腺癌の関係を中心に研究を進めていく。LSRやclaudin-2以外のタイト結合分子も解析結果に含め、また、HDAC阻害薬以外の抗がん剤においてお同様に実験を行い、タイト結合分子の観点からその抗腫瘍効果を解析する予定である。 また、今後はcell line以外にも、肺腺癌患者の腫瘍細胞を分離培養することにより、より臨床に即した実験を計画している。その場合は、病理診断結果に影響を及ぼさない範囲で腫瘍細胞を採取する必要があり、腫瘍径30mm以上の腫瘍が対象になると考えている。
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Causes of Carryover |
研究室内の別の科研費および予算を優先的に使用した結果、本科研費の使用量が予定よりも少なくなった。本年度は本研究費よりPCR、real-timePCR,western blottingなどの実験に必要な薬品の購入を予定している。また、本研究結果を英文学術雑誌に投稿し、その際の英語添削料、投稿料などに使用する予定である。
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Research Products
(4 results)