2020 Fiscal Year Research-status Report
肺動脈性肺高血圧症におけるペリオスチンを介した血管リモデリング進展機構の解析
Project/Area Number |
20K17194
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
堤 建男 順天堂大学, 医学部, 助教 (50866150)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 肺動脈性肺高血圧症 / ペリオスチン / 血管内皮細胞 / 血管平滑筋細胞 / マクロファージ / 炎症性サイトカイン / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
背景と目的:肺動脈性肺高血圧症(PAH)の病態は肺動脈の異常収縮とリモデリングである。特に、肺動脈リモデリングはPAHの進展に重要な役割を果たす。現在、PAHの治療には肺動脈の異常収縮を抑制する様々な肺血管拡張薬が使用可能だが、血管リモデリングを対象とした治療薬はない。PAHにおける血管リモデリングのメカニズムを解明することは、それを標的とした薬剤の開発に不可欠である。細胞外マトリックスタンパク質であるペリオスチンは、正常な組織構築や疾患組織の線維化に関与するほか、増殖や遊走などの細胞機能を制御することが知られる。気管支喘息や間質性肺炎の病態への関与が報告されているが、ペリオスチンのPAH発症における役割は明らかでなく、我々はペリオスチンがPAHの血管リモデリングに関与しているという仮説を立て実験を計画した。 方法:まず、VEGF受容体阻害剤と慢性低酸素暴露によりPAHを誘発した野生型およびペリオスチンノックアウト(KO)マウスを用いて、右心室圧と肺動脈リモデリングを評価した。 次に、PAHの病態に関わる炎症性サイトカインや増殖因子刺激による、ヒト肺動脈平滑筋細胞(HPASMC)および肺微小血管内皮細胞(HPMVEC)からのペリオスチン産生を確認した。また、ペリオスチンがHPASMCやHPMVECの機能に及ぼす影響を確認した。 結果:野生型PAHマウスの肺組織ではペリオスチンの発現が増加し、PAH誘発ペリオスチンKOマウスでは、右室圧と肺動脈筋性化の進展抑制を認めた。各種の刺激因子のなかで、TGF-βはHPASMCとHPMVECからのペリオスチン産生を最も増強する因子であった。ペリオスチンは濃度依存性にHPASMCとHPMVECの遊走を亢進した。さらに、HPASMCにおけるペリオスチン結合受容体が、インテグリンαv受容体であることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の1年目の予定通り、in vivoモデルを用いたペリオスチンのPAH病態進展への関与を示す実験は終了し、ペリオスチンの病態関与へのメカニズムを探求する実験も開始している。実験計画はおおむね順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
過去には、ペリオスチンがマクロファージの組織局所への遊走を制御することが報告されており、マクロファージに誘導される炎症がPAHの血管リモデリングに関与する可能性がある。まずは、PAHを誘導した野生型およびペリオスチンKOのマウス肺組織を用いて、マクロファージの肺動脈周囲への集積を確認する。加えて、マクロファージの遊走に関わるケモカインの発現や、集積したマクロファージのフェノタイプも検証する。さらに、ペリオスチンがヒトおよびマウスのマクロファージの細胞遊走能に与える影響を確認する。 また、ヒト肺高血圧症の血清を用いて、重症度や臨床経過、右心カテーテル検査や心エコーのパラメーターとの相関、予後予測因子としての可能性も検証し、ペリオスチンのPH診断・治療・予後予測のバイオマーカーとしての有用性を検証する予定である。
|