2020 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンサーを用いた鼻腔内混合感染の実態調査および重症化リスクの検証
Project/Area Number |
20K17196
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大野 歩 東海大学, 医学部, 奨励研究員 (30718549)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鼻腔内混合感染 / 次世代シークエンサー / 細菌 / ウイルス / 呼吸器感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
鼻腔は多くの呼吸器感染症の原因各種病原微生物が侵入・定着する場所である。そのことから、呼吸器感染症の予防および治療には鼻腔の細菌叢を効果的に制御することが重要であることが報告されている。本研究では、当研究室が2017年に開発した感染症診断用のポータブル型ゲノム解析システムを基盤とし、二本鎖DNA修飾技術を用いた細菌種を迅速に判定する技術およびナノポアDNAシークエンサーによる鼻腔内の呼吸器ウイルスを網羅的に検出可能な技術の開発を目的の一つとして挙げている。課題1として設定した「細菌種の検出技術の改良」については、薬剤感受性菌および耐性菌の混合液を用いて、未処理および抗菌薬1時間処理後の菌液にPropidium monoazide(PMA)を反応させた。ゲノム抽出後に16SrRNA遺伝子を増幅させ、次世代シークエンサーで解析した結果、PMAの効果により薬剤耐性菌を検出可能であることが確認され(Ohno A et al. Scientific Reports 2021)、PMAを利用することでサンプル中の生菌を効果的に検出可能であることが示唆された。課題2として設定した「呼吸器ウイルスの検出技術の確立」については、3種のRNAウイルス(RSウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス)を購入し、ゲノム抽出法および次世代シークエンサー解析用のライブラリ調製方法の検討の結果、網羅的に検出可能であることが示唆された。また検出効率の低いウイルスの存在が懸念されるものの、サンプル中のウイルスゲノムが少量であっても検出され、PCR増幅せずに検出可能な方法であることが期待された。今後臨床検体での検討を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス流行に伴い、臨床検体の収集および実験試薬・消耗品の入手が一部困難となっているため、解析に当初の計画よりも遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
以下に設定する課題により遂行する。 【課題1】東海大学付属病院のご協力により、呼吸器疾患と診断もしくは疑われる患者に協力を依頼し、同意を得て、滅菌綿棒を用いて鼻腔拭い液を採取する。また、鼻腔拭い液採取の際に患者情報を収集し、【課題2】に用いる。細菌種の同定については、所属研究室において既に実用化されている16S rRNA遺伝子をPCRにより増幅し、ゲノム解析用ライブラリーとする次世代シークエンサー(IonPGM、MinIONなど)により配列決定を行なう方法を用いる。得られた配列はゲノム配列データベースを用いて相同性検索を行い、検体中に含まれる細菌種の同定を行なう。、ウイルスについては2020年度において実施した方法により配列を決定し、ゲノム配列データベースでの相同性検索により、検体中のウイルスを同定する。 【課題2】【課題1】で取得するゲノム解析データと各種の患者情報が十分に蓄積した段階で、細菌およびウイルスの混合感染状況を考察するとともに、MeV (Multiple Experiment Viewer) やPast3などの統計解析ソフトウエアを用いた解析により、病原微生物のプロファイリング結果と患者が示す症状や呼吸器疾患への関連性について明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行の影響から、国内外の出張費の使用ができなくなり、さらには実験試薬および消耗品の入手が困難となり、次年度に購入する必要が生じたため。
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Research Products
(3 results)