2020 Fiscal Year Research-status Report
ステロイド抵抗性重症喘息に対するIL-27の抑制効果の検討
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20K17224
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
持丸 貴生 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (60594570)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 2型自然リンパ球(ILC2) / IL-27 / TLR7 |
Outline of Annual Research Achievements |
2型自然リンパ球(ILC2)はステロイド抵抗性の好酸球炎症を誘導し、重症喘息の病態に関与している可能性が示唆されている。申請者のグループは以前IL-27がILC2の強力な抑制因子であることを発見した。今回、我々はIL-27によるILC2の抑制効果をヒト検体(特にステロイド抵抗性の重症喘息被験者)で検討し、IL-27を介して喘息病態を抑制する最適な方法を見出すことを目的とした。 パターン認識受容体であるToll-like receptor(TLR)の免疫調整作用は、喘息の新たな治療戦略として注目されている。我々は、ウイルスのssRNAを認識するTLR7のアゴニストが生体内でIL-27を誘導することをマウス実験で発見した。マウスにIL-33を点鼻投与するとILC2を介して著明な好酸球性気道炎症が誘導される。このモデルにTLR7アゴニストであるR848を単回投与すると、気道や肺組織に集積する好酸球、ILC2は有意に減少した。ILC2はIL-5, IL-13を産生することで、好酸球性気道炎症や杯細胞過形成を惹起するが、R848投与群では、BALF中のIL-5, IL-13及び病理組織で評価したムチンスコアが有意に低下した。更に、R848投与群では気道過敏性が非投与群と比較して有意に低下した。また、IL-33の投与によりTLR7を高発現する間質マクロファージ(IM)が増加し、単離したIMはR848の刺激でIL-27を産生することを発見した。IMとILC2の共培養ではR848刺激下でILC2の増殖、サイトカイン産生を有意に抑制することが明らかになった。更に、IL-27受容体ノックアウトマウスではR848の投与によるILC2の抑制効果が消失し、TLR7のアゴニストによるILC2の抑制にはIL-27が重要な役割を担っていることを証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に問題なく経過している。
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Strategy for Future Research Activity |
ステロイド抵抗性重症喘息患者における治療応用を目的に、IL-27のILC2に対する抑制効果について更なる検討を重ねていく。 我々はTLR7のアゴニストが、マウス生体内でIL-27を効率よく誘導すること、またIL-33誘導性好酸球性気道炎症においてIL-27を介して ILC2を抑制することを明らかにした。更に、このモデルにおいてIL-27の産生細胞である間質マクロファージが同定された。これらの結果をまとめて論文として発表する予定である。 また、我々は、ヒト末梢血からILC2を単離・培養する手法を確立している。今後IL-27がヒトのILC2に対しても抑制効果を有するかヒトILC2を用いて確認する。更に、重症喘息患者検体を用いてIL-27のILC2に対する抑制効果を検討する。近年喘息は多様性を有する疾患であることが明らかになり、今回の知見を治療応用するにあたりよりIL-27の感受性が高い患者集団を特定する必要がある。我々は患者ごとのILC2についてRNA-sequencingで解析を行い治療効果が期待できる新たなフェノタイプが同定することも検討している。 以上のように、マウスや培養細胞、ヒト検体を用いてIL-27のILC2に対する抑制効果を検討することで、最終的にはステロイド抵抗性重症喘息患者の新たな治療方法を見出せると考えている。
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