2020 Fiscal Year Research-status Report
肺高血圧症の血管炎症におけるMyl9を介したCD69陽性細胞進展機構の解明
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20K17227
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
栗山 祥子 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (30773626)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肺動脈性肺高血圧症 / 肺血管内皮細胞 / 低酸素曝露 / CD69 / 内皮間葉転換 / 肺微小血管内皮細胞 / CD69 / 微小血栓 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺動脈性肺高血圧症(PAH) は、慢性ウイルス感染症や膠原病に高率に合併することから、「血管の慢性炎症」が病態進展に関与することが知られているが、詳細な機構については未だ明らかでない。本研究では、PAHの血管炎症における活性化CD4陽性T細胞に発現するCD69と、その機能リガンドであるミオシン軽鎖(Myl9)の関与に着目した。 Myl9分子は炎症反応に伴って血小板から放出される因子であり、血管内でMyl9網目構造を形成し、CD69を発現した炎症細胞を組織内に誘導する因子として働くと考えられている。 令和2年度は肺動脈性肺高血圧症の特徴的な求心性内膜増殖病変を有するSugen5416+低酸素曝露モデル(SuHxモデル)において、フローサイトメトリーや病理組織の免疫化学染色により、Myl9網目構造の定量化および局在の検討を行った。炎症細胞浸潤は明らかではないものの、SuHxモデルの内皮障害部位および微小血栓形成部位において、Myl9網目構造が正常群と比して有意に形成されていることを証明した。また、SuHxモデル肺のCD31+/CD45-細胞において、Myl9/12の発現が正常群と比較して有意に増強していることが確認された。また、肺微小血管内皮細胞の慢性低酸素曝露刺激にて、Myl9/12発現が増強した。 令和3年度においては、Myl9/12の網目構造の形成が肺高血圧症の病態に果たす役割についてさらなる検討を進める。さらにMyl9/12が肺高血圧症の治療標的になりうるか、抗Myl9/12抗体を投与し、治療効果を確認する予定である。また、肺微小血管内皮細胞の内皮間葉転換を誘導し、Myl9/12の挙動について検討する予定である。加えて、ヒトPAHの保存血清を用い、後方視的解析を行い、Myl9/12値が肺高血圧症の病態のバイオマーカーになりうるかについても検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SuHxモデルの作成にあたり低圧チャンバー内での3週間にわたる飼育が必要であるが、チャンバーの容量制限があり、作成できるモデルマウスの数に限界がある。 また、肺微小血管内皮細胞の内皮間葉転換の誘導にあたり、培養条件や各種サイトカインの種類および検討を重ねているが、いまだ安定した結果が得られておらず、これらの条件検討に予定以上の時間を要している。しかし、実験の反復により、様々な条件の設定は確立しつつあり、今後は実験の遅れを取り戻すことは可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当施設および共同研究者である千葉大学免疫発生学教室と緊密な連携をとりつつ、さらに迅速かつ効率的に実験を進める予定である。さらに、実験を行う要員についても、可能な範囲内で増員することを検討している。
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