2020 Fiscal Year Research-status Report
肺癌でのHIF-1aを介した癌幹細胞維持機構の解析
Project/Area Number |
20K17233
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
岩渕 千里 日本医科大学, 大学院医学研究科, 学振特別研究員 (20514441)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺がん / HIF-1a / O-Glc-Nac |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は肺がんにおける癌幹細胞維持機構におけるHIF-1αの役割について検討するものである。HIF-1αが癌幹細胞の発生・維持機構に重要な役割を果たしていることは報告されているが、本研究課題ではHIF-1αが関与する新たな機構としてO-Glc-Nac修飾について、HIF-1αが直接的に関与するのか否かを検討している。O-Glc-Nac修飾は、多くのタンパク質で多数の部位で起こっており、機能の活性化に関与していることが報告されている。 今年度の研究実績として、HIF-1αをノックダウンした細胞株では野生型の細胞と比べ癌幹細胞の数が減少し、O-Glc-Nac修飾に必須な酵素であるGFATの発現量も有意に減少することを示した。次にO-Glc-Nac修飾阻害剤で処理した時のHIF-1aの発現を調べた。阻害剤にはOSMI-1と2-DGを用いた。両薬剤ともO-Glc-Nac修飾が減少した濃度ではHIF-1aのタンパク発現も減少していた。さらに、HIF-1a阻害剤であるYC-1で処理した細胞でのO-Glc-Nac修飾の変化を見ると未処理と比較して有意にO-Glc-Nac修飾が減少していた。これまで申請者は HIF-1aの転写活性依存的にGFATの発現量が変化し、O-Glc-Nac修飾も変化するということを明らかにしており、上記の結果は、この仮説を強く補填するものである。 さらにGFATをノックダウンした細胞にHIF-1aを高発現させ、GFATとHIF-1aのどちらが癌幹細胞が発生する際により重要であるか検討をした結果、GFATノックダウン細胞でHIF-1aが高発現すると癌幹細胞数が増加する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言の発令による出勤停止期間があった。さらに子供の保育園閉鎖期間もあり3ヶ月ほど遅れて本格的な実験再開となった。再開後も発注した消耗品の納品が滞るなど影響は大きいものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、IL-8刺激によるO-Glc-Nac修飾の増加にHIF-1aがどの様に関与するのかを解析していく。まずはIL-8刺激での癌幹細胞数の変化がHIF-1aノックダウン細胞でも起きるか否かを検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、研究計画通りには進まなかったため今年度は予定額よりも少ない支出となった。来年度には論文投稿や学会発表などに支出する予定である。
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