2020 Fiscal Year Research-status Report
M2c-マクロファージの制御による特発性肺線維症に対する新規抗線維化療法の開発
Project/Area Number |
20K17234
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
柴田 英輔 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00774613)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 特発性肺線維症 / M2cマクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
間質性肺炎(Interstitial Pneumonia: IP)、その中でも最も頻度の高い特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary fibrosis: IPF)は、診断後の生存期間中央値が35ヶ月と報告される予後不良の難治性疾患である。疾患の発症原因は未だ不明だが、IPFは恒常的な「炎症」とその後の組織修復のための「線維化」の繰り返しによって増悪していく。本研究の目的は、この「炎症」と「線維化」の両方を担う細胞としてマクロファージ(MΦ)に注目し、その働きを制御する事で、IPFの予後と機能改善につながる治療標的可能分子を特定する事である。 IPFはステロイド治療に抵抗性であることが知られているが、その理由は今なお不明のままである。我々はその一因としてステロイド治療によりM2c-MΦが誘導されやすくなる事が関与していると推測している。すなわちTransforming growth factor (TGF)-βをはじめとするprofibrotic mediatorの産生能が他のMφより強いM2c-Mφへの分化をステロイド治療が促進してしまう事が、「線維化」を促進してしまうことになり、結果としてIPFに対するステロイド治療が無効である原因となっていると考えた。この仮設の立証のため、M2c-Mφにおけるprofibrotic mediatorの転写因子とその活性化共役因子に注目して解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はヒト単球系白血病細胞(THP-1)やマウスMΦ様細胞(RAW264.7)を用いたin vitroの解析を中心に行った。まずこれらの細胞をM2c-MΦに分化させるため、recombinant IL-10, TGF-β, glucocorticoidでの刺激を行い、これによって、profibrotic mediatorであるConnective Tissue Growth Factor (CTGF)の発現を解析した。結果、CTGFの発現そのものが低く、例えばCTGFの転写因子共役因子であるYAP/TAZをMφにおいてknockdownしても著しい抑制効果が示されないと考えられ、まずは肺胞上皮細胞由来のchemokineやcytokineがMφに与える影響を先行して解析する事とした。
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Strategy for Future Research Activity |
肺胞上皮とMφのcross talkを解析するにあたり、Ⅱ型肺胞上皮様細胞A549細胞のYAP/TAZのdouble Knockout(DKO)細胞をCrispr/Cas9システムを用いて作成中である。Profibrotic factorの転写因子共役因子であるYAP/TAZをDKOしたA549細胞と、M2c-Mφに分化誘導したTHP-1細胞を共培養することで、M2c-Mφが惹起する炎症性cytokineやまたMφのrecruitmentに関わるchemokineの産生が抑制できれば、IPFの治療標的分子としてのYAP/TAZの重要性を証明できる。 現在、YAPおよびTAZをsingle KOしたA549細胞はすでに作成できており、DKO細胞が作成できれば、速やかに肺胞上皮とMφの相互作用の解析が可能である。次年度はin vitroの結果を考慮しながらBleomycinの気管投与によるIPモデル作成にも取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 今年度は試薬の購入などは必要であったものの、in vitroの実験が主で、細胞や消耗品については既に研究室に備蓄されていたものを有効に使用する事ができたため、差額が生じる結果となった。 (使用計画) 次年度は、in vitroの実験だけでなく、動物実験やヒト臨床検体の免疫染色での解析を行うことを想定していて、動物の購入・飼育費、検体の解析に使用する抗体および試薬の使用量が大きく増加すると思われ、差額分を含めた研究費を使用させて頂く予定である。
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