2020 Fiscal Year Research-status Report
先天性腎尿崩症の治療法探索のためのアデニル酸シクラーゼとGsαの構造解析
Project/Area Number |
20K17245
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野村 莉紗 東京医科歯科大学, 高等研究院, プロジェクト助教 (70868124)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | クライオ電子顕微鏡 / 構造解析 / アデニル酸シクラーゼ / 腎性尿崩症 |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性腎性尿崩症(NDI)は未だ特効薬のない、発達や発育の障害、腎障害を伴う難治疾患である。NDIは腎集合管主細胞のGタンパク共役型受容体(GPCR)であるバソプレシン受容体(V2R)とその下流シグナル 関連蛋白質が治療標的となりえる.中でも本研究ではV2Rシグナル下流のアデニル酸シクラーゼ(AC)の構造解析と,将来的な創薬研究への応用を目的としている。腎臓に発現しているアデニル酸シクラーゼはAC6,AC3が報告として挙げられている。我々は現時点で関与している可能性が高いhuman AC6(T. Rieng et al., Am J Physiol Renal Physiol 306、(2014))、hAC3、 hAC4と、hAC9について解析を行うことを考えている。 2020年度は既報(C. Qi et al. Science 364, 389-394 (2019))の通りにウシのアデニル酸シクラーゼ(bovine Adenylyl Cyclase9(bAC9))の発現精製ができるかを確認した。bAC9全長のC末側にEGFPやHisタグ配列をつけたpFastBacMamベクターを作成し、バキュロウイルスを用いて哺乳類細胞にbAC9を発現させ、Hisタグを用いて精製を行なった。結果、ゲル濾過クロマトグラフィーで単一のpeakを認め、SDS-PAGE, WesternBlot法で目的分子量となるタンパク質を精製、電子顕微鏡上でもほぼ均質な既報の目的タンパク質と形状の似たタンパク質を確認した。次にhuman AC9でも同様に発現精製を行なったところ、hAC9(全長とK78-H1248)の精製に成功した。今後はクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)で構造解析を行う予定である。 hAC6とbAC6も同様の発現を試みたが、昆虫細胞、哺乳類細胞とも発現量が乏しく検討段階である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点では、既報のウシアデニル酸シクラーゼ(bAC9)の発現精製が当研究室でも行えることを確認し、まだ論文報告のないヒトのAC9(hAC9)も発現精製が行えることを確認している。 腎集合管に発現し、腎性尿崩症(NDI)と関係している可能性が高いAC6に関しては、ヒト(hAC6)、ウシ(bAC6)の発現を試みているが,昆虫細胞,哺乳類細胞それぞれで発現させたがそもそもの発現量が非常に少なく、精製に難渋している。現状、4種類ほどタグの種類や5末端側または3末端側に入れるか位置の検討、タンパク質の安定性を上げることを目的に構造予測ツールなどを用いてアデニル酸シクラーゼの機能性ドメインの可能性が低いドメインするなど、より安定的に発現するコンストラクトの検討と、昆虫細胞・動物細胞での発現の検討、膜蛋白を可溶化するためにバッファーに加える界面活性剤を7種類ほど検討しているが、現時点までに発現や精製量の改善は得られていない。 上記の通りhAC6の発現精製が難渋していることから、もう1つ下流の候補分子であるhAC3も検討するべく、ヒト胎児腎細胞293(HEK293細胞)からmRNAを抽出し、cDNAを作成して逆転写でhAC3の配列を得て、pFastBac/pFastBacMamベクターに導入している段階である。 やや遅れている、とした理由は、本来の目的であるhAC6の発現生成には至っていないが、現状精製方法等をある程度確立し、これまでに論文報告のないhAC9の発現精製に成功していることと、hAC3の検討を始めたことからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降は、まず、まだ論文報告のないヒトアデニル酸シクラーぜ(hAC9)のクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)を用いた構造解析を行う。また、hAC6, hAC3の発現精製の方法を検討し、cryo-EMによる構造解析を行なっていく方針である。 hAC6に関しては、発現量が少ないことから大量培養も視野に入れつつ、最適な界面活性剤や精製方法を検討している段階である。hAC3に関しては、ヒト胎児腎細胞293(HEK293細胞)からmRNAを抽出し、cDNAを作成して逆転写でhAC3の配列を得てバキュロウイルスを作成し、発現精製の方法を検討する(具体的には、vectorタグの位置や種類の変更、タンパク安定性を向上させるために構造予測ツールを用いて必要最低限のドメインを選択して不要な部分を省略する、昆虫細胞・哺乳類細胞の選択、界面活性剤の選択、バッファーの検討、affinity精製の方法の検討等)。上記より得られたタンパク質を電子顕微鏡で確認し、クライオ電子顕微鏡で撮像、構造を解析することを目指す。
|