2020 Fiscal Year Research-status Report
傷害糸球体のポドサイトに作用する血小板分子CLEC-2の効果
Project/Area Number |
20K17257
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
田中 景子 東海大学, 医学部, 奨励研究員 (80794370)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ポドサイト / 血小板 / Podoplanin / CLEC-2 |
Outline of Annual Research Achievements |
Podoplaninは腎糸球体ポドサイトの細胞膜に強く発現するが、その機能は不明である。Podoplaninの内因性結合分子は、血小板に発現するC-type lectin like receptor-2(CLEC-2)である。正常時、ポドサイトは糸球体基底膜により血小板から隔絶されているが、基底膜傷害時に血小板や血漿中の可溶性CLEC-2がポドサイトに作用する事が考えられた。 当該年度は、リコンビナントCLEC-2を作製し、in vitroおよびin vivo実験を行った。 in vitro実験では、FcおよびFc-CLEC-2で培養ポドサイトを刺激する実験を行った。Fcコントロールに比較し、Fc-CLEC-2刺激では、ポドサイトのアクチン線維が減少し、細胞突起は収縮し、細胞接着能の低下と遊走能の向上をみとめた。また、Podoplaninとアクチン線維をつなぐ介在蛋白ERMの脱リン酸化をみとめた。 in vivo実験のために、より小分子のStrepTagII-FLAGタグCLEC-2(約30kDa)の発現Vectorを作製し大量精製した。正常マウスに投与したところ、FLAG-CLEC-2の糸球体への接着を確認できた。当初の予測通り、糸球体のRNA解析でSerpine1の上昇をみとめ、電顕SEM像でポドサイトの足突起の退縮をみとめた。糸球体LysateのWestern Blotと蛍光染色では、Ezrinの脱リン酸化をみとめた。 以上より、血小板分子CLEC-2は、糸球体傷害時にポドサイトに発現するPodoplaninに結合し、介在蛋白Ezrinの脱リン酸化により、 Podoplaninからアクチンを乖離させ、アクチン線維の収縮を起こし、その結果ポドサイトは形態変化をおこし、遊走能を獲得することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通りに、リコンビナント蛋白の大量作製後、in vitro実験とin vivo実験を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回観察された結果は、予想より軽微であり、ポドサイト傷害モデルマウスでのCLEC-2の効果を検討することが困難であった。今回使用した単量体CLEC-2の作用と、血小板自体のポドサイトへの作用を比較し、CLEC-2の多量体形成や他因子との共作用がCLEC-2の作用の強弱に関係していないか検討する必要がある。また尿中血小板やCLEC-2については、定量的評価を加え、ポドサイト傷害度との相関を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
in vivo実験の結果が予測より軽度であり、当初計画した実験が一部中止となった。次年度のマウス実験に利用する予定である。
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