2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K17263
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
関 桃子 東京女子医科大学, 医学部, 後期臨床研修医 (80867672)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 赤血球寿命 / ホスファチジルセリン / フリッパーゼ / スクランブラーゼ / ATP / カリウム / ATP11C |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスファチジルセリン(PS)の脂質二重層における局在は、PSを外層から内層へ能動輸送するフリッパーゼ及びPSを外層から内層または内層から外層へ拡散輸送するスクランブラーゼという膜タンパク質によって制御されている。PSはフリッパーゼとスクランブラーゼによって、ホスファチジルコリン(PC)はスクランブラーゼによってのみ輸送されるため、蛍光標識したPS/PCが外層から内層へ輸送される速度を測定し、フリッパーゼ及びスクランブラーゼ活性を算出することとした。 健常人から静脈血を採取し(倫理委員会承認#3835R)、密度勾配遠心法を用いて老化赤血球と非老化赤血球へ分離した。それぞれにおいて、上記の方法でフリッパーゼ及びスクランブラーゼ活性を測定し比較したところ、老化赤血球ではスクランブラーゼ活性は変化していないが、フリッパーゼ活性が約半分に低下していた。フリッパーゼ活性に影響を与える赤血球内のATP濃度、カリウム濃度は老化赤血球で低下し、人為的なカリウム濃度の低下でもフリッパーゼ活性は低下した。赤血球内のカルシウム濃度は測定できなかったが、人為的なカルシウム濃度の上昇によってもフリッパーゼ活性は低下した。カリウム濃度の低下とカルシウム濃度の上昇を同時に起こしても相乗効果は認めなかった。赤血球における主要なフリッパーゼであるATP11Cは老化赤血球で減少しており、これもフリッパーゼ活性の低下に関与していると考えられた。フリッパーゼのATP濃度に対するミカエリス定数、人為的なカリウム濃度変化とフリッパーゼ活性の関係から、老化赤血球で測定したATP及びカリウム濃度ではフリッパーゼ活性低下への影響は小さく、老化赤血球ではATP11Cの減少がフリッパーゼ活性低下の主要な要因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、2020年度は正常非老化赤血球と正常老化赤血球、腎性貧血患者の赤血球においてPS表在化に影響しうる因子の同定とそれらの変化の程度を測定することを想定していた。正常非老化赤血球と正常老化赤血球においては達成できたが、腎性貧血患者の赤血球についての解析が未だ行えていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、腎性貧血患者の赤血球においてフリッパーゼ及びスクランブラーゼ活性を測定し、またこれらの活性に影響を与える得る因子、すなわちATP濃度、カリウム濃度、ATP11Cを測定し、これらのフリッパーゼ活性への影響を明らかにする。また、正常老化赤血球において赤血球内のカリウム濃度やATP濃度を回復させることによりフリッパーゼ活性が改善するか確認する。さらに、プロテオーム解析で正常非老化赤血球と正常老化赤血球とを比較することによりATP11Cが減少する機序を明らかにし、将来的にはATP11Cの減少を防ぐ方法を検討する。
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Causes of Carryover |
すでに研究室で所持していた物品を使用できたこと、論文作成を行っていたこと、倫理審査委員会への申請の結果を待っており腎性貧血患者の赤血球の解析を行えなかったことで、予定していたより使用額が減ってしまった。
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