2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞老化を介した高脂肪食摂取による慢性腎臓病や腎がん発症機序の解明
Project/Area Number |
20K17264
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒谷 紗絵 東京大学, 医科学研究所, 助教 (60844131)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 慢性腎不全 / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢性疾患の病態には『細胞老化』が分子学的基盤となることが近年注目されている。慢性腎不全は加齢性疾患の代表であり申請者は慢性腎不全の発症や進展にも細胞老化がかかわるものと考えた。 細胞老化は、体内のさまざまな内的・外的ストレスによって誘導される。しかし老化細胞は、個体内では細胞の数%を占めるのみで、単離し一細胞レベルで解析することは非常に困難であった。そこでまず、老化細胞を個体内で識別し、一細胞レベルで解析できる動物モデルが重要と考えられた。この目的のために、当教室で蛍光強度のより高い赤色蛍光蛋白質tdTomatoを用いて、個体内のp16陽性細胞の追跡が可能なマウス“p16-CreERT2tdTomatoマウス”を作成した。これは、p16INK4Aプロモーター下流にCreERT2リコンビナーゼ遺伝子を発現したp16-Cre ERT2マウスと、Cre ERT2リコンビナーゼ活性依存的にtdTomatoを発現するRosa26-CAG-lsl-tdTomatoマウスを交配させたものである。p16-CreERT2tdTomatoマウスにタモキシフェンを投与すると、Cre ERT2が核内に移行し、Rosa26にあるlox配列に挟まれたSTOP配列が除かれ、後ろのtdTomatoが発現し、p16陽性細胞が赤色に蛍光発色する。このマウスを使用し、慢性腎不全と細胞老化の関わりについて詳細な解析を試みた。 これまでの検証で放射線などのDNA障害は細胞老化を誘導させ、個体内で長期にわたり影響を与えると考えてきた。そこで、腎臓に放射線などのDNA障害を与え、さらに高脂肪食負荷やヒトの慢性腎不全の病態によく似た病理像を呈するアデニン食負荷も並行し、まずこれらの外的ストレスが腎臓内で細胞老化を誘導するか検証し、さらに慢性腎不全の病態にどのように寄与するのかを解析した。
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