2020 Fiscal Year Research-status Report
炎症と免疫システムが寄与する慢性腎臓病の塩分感受性高血圧の病態解明
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20K17276
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
橋本 博子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (60846062)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | WNKキナーゼ / 高血圧 / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(CKD)では塩分感受性が亢進しているが、WNKシグナルの関与については不明であった。また、炎症性サイトカインと高血圧発症の関連が報告されているが免疫機構によるWNKシグナル制御についても不明である。我々はこの二つの点を明らかにするため、3種類のマウスCKDモデルを作成しWNKシグナルを評価した。その結果アリストロキア酸腎症モデルにおいてWNK1-SPAK-NCCシグナルが亢進していることを発見した。アリストロキア酸腎症モデルに4%高塩食を投与しても亢進したWNK1-SPAK-NCCシグナルは十分に抑制されず、アリストロキア酸腎症マウスは塩分感受性高血圧を呈し、アリストロキア酸腎症では増加したWNK1蛋白がSPAKを介してNCCを活性化させ、塩分感受性高血圧発症に寄与していることが明らかとなった。 WNK1蛋白増加に関わる因子の探索のため3種類のCKDモデル腎臓のmRNA発現を炎症性サイトカインに注目して比較したところ、TNFαとIFNγの転写がWNK1が増加するモデルで共通して増加していた。腎臓遠位尿細管上皮培養細胞(mpkDCT細胞)にTNFα、IFNγを負荷したところTNFαを負荷した群でのみWNK1蛋白発現の増加が確認された。さらに我々はTNFα阻害薬エタネルセプトをアリストロキア酸腎症モデルマウスに投与した。その結果、エタネルセプトは遠位尿細管においてWNK1-SPAK-NCCシグナルの亢進を抑制し、塩分感受性を是正することが明らかになった。 以上より、TNFαはWNK1-SPAK-NCCシグナルを亢進させ、CKDの塩分感受性高血圧に関与することがわかった。本研究によってWNKシグナルが腎臓内の炎症/免疫シグナルと塩分感受性をつないでいることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、論文報告ができており、計画は順調に進呈していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
TNFαはWNK1-SPAK-NCCシグナルを亢進させ、CKDの塩分感受性高血圧に関与することがわかった。本研究によってWNKシグナルが腎臓内の炎症/免疫シグナルと塩分感受性をつないでいることが明らかとなった。また、CKDではサイアザイド系利尿薬の効果に個人差があることが知られている。本研究の結果は、サイアザイド系利尿薬の有効なCKD患者においてTNFα-WNK1-SPAK-NCCシグナルの亢進している可能性を示唆していると考えられる。腎内でのTNFα産生を反映する尿中TNFαの測定がWNK1-SPAK-NCCシグナルの活性、サイアザイド系利尿薬の有効性を事前に判断するバイオマーカーとなる可能性があり今後の研究を進めていきたい。
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