2021 Fiscal Year Research-status Report
リソソーム機能不全としての肥満関連尿細管症の病態解明
Project/Area Number |
20K17279
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南 聡 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (00791592)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肥満関連尿細管症 / リソソーム / オートファジー / TFEB |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子改変マウス・培養尿細管細胞を用いた肥満関連尿細管症におけるTFEBの役割の検討: 培養尿細管細胞にmNeonGreen-TFEBベクターを導入た細胞を作製し、脂肪酸負荷前後のTFEBの核内移行(TFEBの活性化を反映)を検討したところ、脂肪酸負荷によりTFEBが活性化することを明らかとした。また引き続く解析により培養尿細管細胞は脂肪酸負荷後にリソソーマルエクソサイトーシスを介して過剰な脂質を細胞外に排泄していることが明らかとなった。更にCrisper-Cas9法を用いてTFEBノックアウト尿細管細胞を樹立し、脂肪酸負荷を行ったところ、野生型尿細管細胞に比してTFEBノックアウト尿細管細胞ではリソソーマルエクソサイトーシスの低下、引き続くリソソーム異常を認めた。 次にマウスを用いた実験を行った。まず野生型マウスに通常食あるいは高脂肪食負荷を与え、腎臓におけるTFEBの発現を検証したところ、2ヵ月の高脂肪食負荷群においてTFEB発現の亢進を認めた。また尿中リピドミクス解析、腎臓電子顕微鏡検査によりマウス腎近位尿細管はリソソーマルエクソサイトーシスを用いて過剰な脂質を尿中に排泄していることが明らかとなった。そこで近位尿細管特異的TFEBノックアウトマウスを作製し高脂肪食負荷を与えたところ野生型マウスに比してTFEBノックアウトマウスではリソソーマルエクソサイトーシスの低下・リソソーム異常が示された。また高脂肪食下での虚血再灌流障害に対する脆弱性はTFEBノックアウトマウスにおいて増悪することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度までの研究ではマウスに対する高脂肪食負荷ならびに培養尿細管細胞に対する脂肪酸負荷によりTFEBが活性化すること、高脂肪食負荷に対してTFEBノックアウトマウスでは野生型マウスに比してリソソームの形態異常の増悪を認めることを明らかとしていた。2021年度はTFEBノックアウト尿細管細胞やTFEBノックアウトマウスを用いた研究により、TFEBが過剰に蓄積したリソソーム内脂質をリソソーマルエクソサイトーシスにより排泄することでリソソーム恒常性維持に寄与していることを明らかにできた。上述の成果に関して現在論文投稿準備中である。以上から、本研究課題は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子改変マウスを用いた肥満関連尿細管症におけるTFEBの役割の検討: 高脂肪食負荷下での近位尿細管特異的TFEBノックアウトマウスはリソソーマルエクソサイトーシスの低下によるリソソーム機能異常をきたすことにより腎虚血再灌流障害(リソソーム機能の維持が細胞傷害に対抗するために必要になる)負荷への感受性が亢進することを明らかにした。今後はTFEBがリソソーマルエクソサイトーシスを制御する分子機構に関して、遺伝子改変培養尿細管細胞やRNAseq解析を併用することにより解析を進めていく方針である。同時に脂肪酸負荷によりTFEBが活性化する分子機構に関しても解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究の進捗は順調であるが、2020年にCOVID-19感染症のため研究が中断する期間があったため次年度使用額が生じている。次年度は今後の研究の推進方策に記載したように、脂肪酸負荷によるTFEB活性化機構やTFEBによるリソソーマルエクソサイトーシス制御機構解明のためにRNAseq解析をはじめとする様々な解析が必要であり、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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[Presentation] TFEBはリソソーマルエクソサイトーシスを介したリン脂質蓄積抑制により腎保護的に働く2021
Author(s)
中村隼,山本毅士.高畠義嗣,難波倫子,南聡,高橋篤史,松田潤,酒井晋介,余西洋明,前田志穂美,新村文男,松阪泰二,猪阪善隆
Organizer
第64回日本腎臓学会学術総会