2022 Fiscal Year Research-status Report
リソソーム機能不全としての肥満関連尿細管症の病態解明
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20K17279
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南 聡 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任助教(常勤) (00791592)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肥満関連尿細管症 / リソソーム / オートファジー / TFEB / 近位尿細管細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂肪食負荷野生型マウスでは腎臓のTFEB発現は亢進した。また飽和脂肪酸であるパルミチン酸(PA)の培養近位尿細管細胞への負荷によりTFEB核内移行が促進した。以上から肥満関連尿細管症時やPA負荷時にTFEBが活性化することが明らかとなった。TFEBの活性は主にmTORC1により制御されるためその活性を検証したところPA負荷はmTOC1の古典的下流因子(S6RP、4E-BP1)のリン酸化には影響を与えなかった。一方近年TFEBのmTORC1によるリン酸化にはRag GTPase依存性Rheb非依存性の基質特異的機構を介することが明らかになった。そこでPAによるTFEB活性化がRag GTPase依存性か検証したところPA負荷ではS6RPや4E-BP1はリン酸化される一方でTFEBのリン酸化は生じなかった。またRagC過剰活性化細胞ではTorin1(mTORC1阻害薬)によりTFEBの核移行が促進されたが、PAによるTFEBの核移行は認めなかった。以上からPAはRag GTPase依存性にTFEBを活性すると考えられた。また培養近位尿細管細胞へのPA負荷はリソソームの機能異常・未消化物の蓄積をきたすがTFEB欠損によりこれらの増悪を認めた。野生型細胞ではリソソーマルエクソサイトーシスが活発に生じることによりリソソーム内部に蓄積した未消化物を積極的に細胞外に排泄する一方でTFEB欠損細胞ではリソソーマルエクソサイトーシスが著明に低下していた。さらに高脂肪食負荷近位尿細管特異的TFEB欠損マウスでは巨大リソソームが増加しており、リソソーム異常が示唆された。また高脂肪食負荷下における腎虚血再灌流障害(リソソーム機能の維持が細胞傷害に対抗するために必要になる)モデルの検討により、TFEBの欠損は肥満下における急性腎障害に対する感受性の亢進につながることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では①高脂肪食負荷(マウス)や飽和脂肪酸負荷(培養細胞)によりTFEBが活性化されること、②その分子機構としては飽和脂肪酸がRheb非依存性、Rag GTPase依存性にmTORC1を抑制する作用によること、③飽和脂肪酸負荷時におけるTFEBの活性化はリソソーマルエクソサイトーシスの活発化、引き続くリソソーム内部に蓄積した未消化物の積極的な細胞外への排泄を誘導することによりリソソーム恒常性維持に働くこと、④近位尿細管特異的TFEBノックアウトマウスを用いた解析から、肥満関連尿細管症においてTFEBはリソソーマルエクソサイトーシスを活性化しリソソーム内部に蓄積する未消化物質を尿細管腔内に放出することにより、リソソーム恒常性維持に働くこと、⑤TFEBのリソソーマルエクソサイトーシスを介したリソソーム恒常性維持機構は肥満関連尿細管症に合併した急性腎障害に対して保護的に働くこと、を明らかにした。以上の成果はJCI insight誌に報告した。このことから本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題においては肥満関連腎症時に近位尿細管細胞におけるTFEBが活性化され、リソソーマルエクソサイトーシスの制御によりリソソーム恒常性維持に働くことを明らかとし、さらに肥満関連尿細管症時における急性腎障害に対して近位尿細管細胞のTFEBは保護的に働くことを明らかとした。一方で近年TFEBの過剰な活性化は腎癌の発症や腎嚢胞の出現に関わることが明らかになっている。そのため肥満関連尿細管症治療として単純なTFEBの活性化は危険であり、今後はTFEBが腎保護的に働く下流因子、特にTFEBがリソソーマルエクソサイトーシスを制御する制御因子の解明を中心に研究を継続していく方針である。またTFEBは抗老化因子であることが広く知られており、近位尿細管細胞の細胞老化は加齢腎や慢性腎臓病の発症や進展に密接に関わることが知られているため、近位尿細管細胞におけるTFEBが加齢腎や慢性腎臓病に対抗するかも検証していく方針である。さらに他の腎構成細胞(糸球体上皮細胞や糸球体内皮細胞など)の恒常性にもオートファジー-リソソーム経路は密接にかかわることが報告されているため、これら腎構成細胞におけるTFEBの果たす役割についても検討していく方針である。
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Causes of Carryover |
COVID19感染に伴う研究室の閉鎖などにより動物実験を中心として研究の遅れが生じたため次年度使用額が生じた。現在野生型マウスと近位尿細管細胞特異的TFEBノックアウトマウスに高脂肪食長期負荷を行っており、次年度使用額はこの解析のために使用する。
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[Journal Article] TFEB-mediated lysosomal exocytosis alleviates high-fat diet-induced lipotoxicity in the kidney.2023
Author(s)
Nakamura J, Yamamoto T, Takabatake Y, Namba-Hamano T, Minami S, Takahashi A, Matsuda J, Sakai S, Yonishi H, Maeda S, Matsui S, Matsui I, Hamano T, Takahashi M, Goto M, Izumi Y, Bamba T, Sasai M, Yamamoto M, Matsusaka T, Niimura F, Yanagita M, Nakamura S, Yoshimori T, Ballabio A, Isaka Y.
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Journal Title
JCI Insight.
Volume: 8
Pages: e162498
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] TFEBは尿中へのリン脂質排出促進により肥満関連尿細管症に対して保護的に働く2022
Author(s)
中村隼,山本毅士,高畠義嗣,難波倫子,南聡,高橋篤史,松田潤,酒井晋介,前田志穂美,松井翔,新村文男,松阪泰二,猪阪善隆
Organizer
第65回日本腎臓学会学術総会
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